藁白釉ぐい呑 西端正
藁白釉ぐい呑 西端正
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幅:8cm 奥行:7cm 高さ :7cm
藁白釉ぐい呑(わらじろゆう ぐいのみ) 西端正様作
――雪の帳と赤土の大地が盃に交差する、掌の中の小宇宙です
藁白釉が描く雪景色のような表情
本作を覆う藁白釉は、藁に含まれる珪酸とアルカリ分が薪窯の高温でガラス化し、柔らかな乳白色を生み出しております。釉層の中には素地の鉄分が黒褐色となって点在し、まるで初春の雪面に現れる木の影を思わせる景色を形づくっています。ところどころで釉が薄く切れ、丹波土の赤褐色が覗く様子は、雪解け後にその下の大地が顔を覗かせる瞬間のようで、白と黒と赤が奏でる三重奏が器面に奥行きを与えております。
凹凸と膨らみが生む彫刻的フォルム
胴体はゆるやかな多角形を基調としながら、縦方向に刻まれた面取りが光を受けて陰影を刻みます。さらに側面には二つの突起が設けられ、指掛かりとしての機能を果たすと同時に、雪庇の張り出しを想わせる造形的アクセントとなっています。口縁は波打ち、飲み口の位置によって口当たりが微妙に変化し、酒を含む所作に心地よい遊びをもたらします。
丹波土が醸し出す温かな呼吸
素地には鉄分を多く含む丹波産の荒土が用いられ、釉薬が薄い部分から赤褐色の肌が露出しています。粗めの土粒は触れた指先にざらりとした感触を伝え、藁白釉の滑らかさと対比を成すことで、視覚と触覚の双方から「土と炎」のエネルギーを味わわせてくれます。底部はしっかりと焼き締まりつつも肉薄に仕上げられているため、掌に包めば軽やかでありながら、酒の温度をゆるやかに保つ機能性も備えています。
ぐい呑としての機能美
容量は一口酒に最適な小ぶりサイズで、注がれた酒が浅く広がるため、香りを逃さずに立ち上らせる構造です。突起を親指で押さえ、人差し指・中指で底部を支えると、自然と安定した持ち方が決まります。冷酒であれば白と黒のコントラストが酒面に映え、燗酒であれば乳白釉がほのかに曇り、雪洞(ぼんぼり)のような柔らかい光を醸し出します。
伝統と革新を繋ぐ意匠
藁白釉という古典的素材は、桃山期の志野や灰被(はいかつぎ)などに通じる歴史を持ちますが、西端正様は突起や大胆な面取りを取り入れ、ぐい呑という小宇宙の中に彫刻的な現代性を付与されています。赤土をあえて露出させる手法は、従来の丹波焼には少ないコントラスト表現であり、伝統と革新の接点を明確に示しています。
侘び寂びと生命力の共鳴
乳白の静謐さは侘び寂びを湛え、赤土の露出は大地の生命力を象徴します。雪面を思わせる白の中で土が呼吸し、突起が躍動感を添えることで、「静と動」「陰と陽」が盃一つの内に対話を繰り広げております。茶席に添えても良し、晩酌で静かに向き合っても良し――使い手の時間に寄り添い、酒の味わいとともに景色を変える器です。
歳月が刻む第二の景色
細かな貫入を抱えた藁白釉は、酒や水分がゆるやかに染み込み、白から淡い灰褐色へと変化していきます。突起や面取りは手指に触れ続けることで艶を帯び、赤土の部分は酒分と油分を吸ってしっとりとした深緋を纏います。年月とともに雪解けの白は夕映えの淡紅へ、墨斑は和らいだ朽葉へと移ろい、持ち主だけの物語を蓄えていくことでしょう。
西端正様の「藁白釉ぐい呑」は、雪と大地、静けさと躍動を掌に宿す小さな彫刻です。注ぎ、味わい、使い込むほどに深まる景色をぜひ長くご愛蔵いただき、一期一盃のひとときをお愉しみくださいませ。
西端正 略歴
昭和二十三年 二月二十四日生
昭和四十四年 作陶を始める
昭和五十一年 兵庫県展奨励賞
昭和六十一年 日本伝統工芸展初入選
昭和六十三年 日本伝統工芸展入選 日本伝統工芸展日本工芸会総裁賞
平成元年 日本陶芸展入選半どんの会 乃川記念賞
平成三年 日本伝統工芸展入選 日本陶芸展入選 茶の湯の造形展大賞
平成四年 日本伝統工芸展入選 茶の湯の造形展優秀賞 兵庫県新進芸術家奨励賞 NHK主催 パリ―日本の陶芸 「今」一〇〇選招待出品 茶の湯の造形展優秀賞
平成五年 日本伝統工芸展入選 個展 そごう広島店 京都シュマン
平成六年 日本伝統工芸展入選 個展 日本橋三越本店
平成七年 日本伝統工芸展入選 個展 そごう広島店
平成八年 日本伝統工芸展入選 茶の湯の造形展優秀賞 個展 日本橋三越本店
平成九年 茶の湯の造形展奨励賞
平成十年 日本伝統工芸展入選 個展 日本橋三越本店 日本伝統工芸展入選
平成十二年 個展 日本橋三越本店 個展 福岡三越
平成十三年 ギャラリー堂島 日本伝統工芸展入選
平成十四年 個展 日本橋三越本店 個展 ギャラリー堂島
平成十五年 個展 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン
平成十六年 父子展 そごう広島店 茶の湯の造形展大賞
平成十七年 明石市立文化博物館・兵庫のやきもの展出品 赤土部臺買上 兵庫陶芸美術館 個展 ギャラリー堂島 日本橋三越本店
平成十八年 茶の湯の造形展大賞 日本伝統工芸展入選 ボストン美術館及び ニューヨークジャパンソサエティギャラリー 個展 横浜高島屋 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン 父子展 松山高島屋
平成十九年 陶俊会展 そごう横浜店 茶の湯の造形展奨励賞 日本伝統工芸展入選
平成二十年 日本伝統工芸展入選 個展 横浜高島屋 日本橋三越本店 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン 陶俊会展 船橋 西武 そごう広島店 日本陶芸展招待出品
平成二十一年 個展 ギャラリー堂島 仙台三越
平成二十二年 そごう神戸店 智美術館大賞展現代の茶 出品 個展 横浜高島屋 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン
平成二十三年 日本陶芸展招待出品 個展 アメリカ・ニューヨーク・ジョーンBマービス 日本陶芸展招待出品
平成二十五年 菊池寛実記念智美術館『現代の名碗”出品 個展 日本橋三越本店 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン ギャラリーミヤザキ そごう神戸店 千葉そごう
平成二十六年 個展 個展 日本橋三越本店
平成二十七年 兵庫県文化賞受賞
平成二十八年 東広島市立美術館 生活を彩る陶―食の器 出品 アメリカ・ニューヨーク・ジョーンBマービス
平成二十九年 四十周年記念展出品
平成三十年 個展 日本橋三越本店
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作品により貫入などによる、茶碗への染み込みが発生することがございますが、それも経年変化の味わいとしてご理解いただきますようお願いいたします。