藁白釉ぐい呑　西端正

幅:7.2cm  　奥行:7cm     高さ :6cm

藁白釉ぐい吞　西端正 作

 白釉に走る黒線が折り紙の折り目を思わせる、立体的リズムの酒器

折り紙のように刻まれた面構成

本作は、ろくろを用いず粘土を多角的に押したたむことで生まれた鋭い稜線が特徴です。六面体にも似た面取りの連なりは、光を受ける角度によって陰影を大きく変化させ、掌の中で彫刻を鑑賞するような立体感を味わわせてくれます。

藁白釉のミルキーな厚みと黒の走り筋

厚掛けの藁白釉が溶融・収縮する過程で、素地の赤土に含まれる鉄分が縫い目のような黒線となって浮き出し、白と黒の大胆なコントラストを形成。

釉面はごく浅い貫入を宿し、近寄って見ると淡い黄色の結晶粒が星屑のように散っているのが分かります。

高台近くでは釉がわずかに途切れ、赤土が露出して温かみを添えています。

手に収まる柔らかな量感

口縁は花弁のように緩やかな波を描き、唇への当たりが優しい一方、胴部は軽く絞り込まれているため指が自然に掛かり、安定した酒注ぎを実現。冷酒の澄んだ透明感、常温酒の淡い黄金色ともに、白釉の内面が柔らかく反射し、杯の中に静かな光景を映し出します。

土・釉・炎の対話の成果

西端正様が継続して探究する藁白釉シリーズの一環として、土味を損なわず、釉の厚みによる彫塑的表情を追求した作品です。赤土の鉄分量や窯内の還元状態を細かく調整することで、黒線の濃淡や釉肌の皺感を意図的に引き出しています。

小ぶりながら造形と釉景が豊かに共鳴し、酒を注ぐたびに新たな面影を見せる「掌の彫刻」。晩酌の時間を静かに格上げしてくれるとともに、器そのものを眺める愉しみをもたらしてくれる一客です。

西端正　略歴

昭和二十三年 二月二十四日生
昭和四十四年 作陶を始める
昭和五十一年 兵庫県展奨励賞
昭和六十一年 日本伝統工芸展初入選
昭和六十三年 日本伝統工芸展入選 日本伝統工芸展日本工芸会総裁賞
平成元年 日本陶芸展入選半どんの会 乃川記念賞
平成三年 日本伝統工芸展入選 日本陶芸展入選 茶の湯の造形展大賞
平成四年 日本伝統工芸展入選 茶の湯の造形展優秀賞 兵庫県新進芸術家奨励賞 NHK主催 パリ―日本の陶芸 「今」一〇〇選招待出品 茶の湯の造形展優秀賞
平成五年 日本伝統工芸展入選 個展 そごう広島店 京都シュマン
平成六年 日本伝統工芸展入選 個展 日本橋三越本店
平成七年 日本伝統工芸展入選 個展 そごう広島店
平成八年 日本伝統工芸展入選 茶の湯の造形展優秀賞 個展 日本橋三越本店 
平成九年 茶の湯の造形展奨励賞
平成十年 日本伝統工芸展入選 個展 日本橋三越本店 日本伝統工芸展入選
平成十二年 個展 日本橋三越本店 個展 福岡三越
平成十三年 ギャラリー堂島 日本伝統工芸展入選
平成十四年 個展 日本橋三越本店 個展 ギャラリー堂島
平成十五年 個展 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン
平成十六年 父子展 そごう広島店 茶の湯の造形展大賞
平成十七年 明石市立文化博物館・兵庫のやきもの展出品 赤土部臺買上 兵庫陶芸美術館 個展 ギャラリー堂島 日本橋三越本店
平成十八年 茶の湯の造形展大賞　日本伝統工芸展入選 ボストン美術館及び ニューヨークジャパンソサエティギャラリー 個展 横浜高島屋 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン 父子展 松山高島屋
平成十九年 陶俊会展 そごう横浜店 茶の湯の造形展奨励賞 日本伝統工芸展入選
平成二十年 日本伝統工芸展入選 個展 横浜高島屋 日本橋三越本店 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン 陶俊会展 船橋 西武 そごう広島店 日本陶芸展招待出品
平成二十一年 個展 ギャラリー堂島 仙台三越
平成二十二年 そごう神戸店 智美術館大賞展現代の茶 出品 個展 横浜高島屋 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン
平成二十三年 日本陶芸展招待出品 個展 アメリカ・ニューヨーク・ジョーンBマービス 日本陶芸展招待出品
平成二十五年 菊池寛実記念智美術館『現代の名碗”出品 個展 日本橋三越本店 アメリカ・サンタフェ・タッチングストン ギャラリーミヤザキ そごう神戸店 千葉そごう
平成二十六年 個展 個展 日本橋三越本店
平成二十七年 兵庫県文化賞受賞
平成二十八年 東広島市立美術館 生活を彩る陶―食の器 出品 アメリカ・ニューヨーク・ジョーンBマービス
平成二十九年 四十周年記念展出品 
平成三十年 個展 日本橋三越本店

西端正様との対談