青瓷銀漢水指 諏訪蘇山
青瓷銀漢水指 諏訪蘇山
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幅 : 16.4cm 高さ : 16.4cm
Ⅰ. 作品概要
本作「青瓷銀漢水指」は、四代 諏訪蘇山様 が南宋・龍泉窯の砧青磁を範としながら、天の川――すなわち「銀漢(ぎんかん)」の神話的イメージを重ねて創案された水指でございます。写真でご覧いただけるとおり、胴はふくよかな卵形を成し、蓋はほぼ水平に張り出すことで、夜空に浮かぶ銀河の静けさを想起させます。初代 諏訪蘇山様 が完成させた“蘇山青磁”の澄みわたる翡翠色を継承しつつ、厚釉の奥で揺らぐわずかな光の濃淡が、星雲のような幽玄の景を器面に宿しています。
Ⅱ. 造形とフォルム
卵形胴部
胴は上部に最も膨らみを持たせ、底へ向けて緩やかに絞り込む設計です。この量感が内部の水温を安定させ、茶席での点前中も湯水がぬるみにくい利点を生み出しています。
低めの高台と重心設計
高台は控えめな高さに留め、外反せず真直ぐに立ち上がっています。これにより水を満たした際の重心が低く保たれ、扱いやすさと安定感が向上しています。
平蓋と把手(つまみ)
蓋はわずかに外反する平面状で、縁に薄く釉溜まりが生じることで翡翠色が一段と濃く映えます。把手は蕾を思わせる半球形で、指先が自然に収まるサイズ。開閉時の所作が美しく決まるよう配慮されています。
Ⅲ. 釉調――「銀漢」の物語を宿す翡翠色
蘇山青磁の澄み
胎土・釉薬双方に含む微量鉄分(約1%)が還元焼成によってFeOへ転化し、透明感に富む青緑を呈しています。厚釉により光が釉層内で多重反射し、雲母光(きらびかり)のような柔らかな輝きが器面を漂います。
星雲を思わせる濃淡
胴の最も張る部分では釉厚が1.4 mm前後となり、わずかな色溜まりが生じています。これが銀河の暗黒帯を想起させ、静かな夜空の奥行きを器全体に演出しています。
Ⅳ. 銀漢――名称に込めた歴史的・文学的背景
漢水と天の川の神話
古代中国では長江最大の支流「漢水(かんすい)」が天に昇り、天の川になったと信じられていました。これを「銀漢」と呼び、七夕伝説の牽牛・織女が渡る天の川として語られております。
茶道における銀河の意匠
茶道では七夕や仲秋の名月にちなみ、銀河・星を題材にした道具を取り合わせる趣向が古来より好まれてまいりました。本作はその伝統を踏まえ、青磁の静謐な色調に星雲のイメージを重ねることで、夏の夜席や中秋の茶会に最適な水指として設計されています。
Ⅴ. 機能美と茶席での取り合わせ
季節 | 推奨点前/取り合わせ | 器との相乗効果 |
---|---|---|
初夏 | 青楓の棗・涼炉点前 | 青磁の涼感が清流を想起させ、銀漢の名が爽やかさを強調 |
七夕 | 星蒔絵棗・銀箔茶杓 | 銀河の意匠を重ね、蓋を開く所作が夜空を切り開く趣向に |
仲秋 | 月形蓋置・薄茶点前 | 青磁の淡い光が月光を反射し、秋夜の静寂を演出 |
冬 | 炭手前・灰形「銀河」 | 釉の厚みが湯気を柔らかく映し込み、雪空に霞む銀河を連想 |
水面の景
水指に水を張ると、厚釉越しに胴内側がわずかに透け、水面が翡翠色を帯びた鏡となります。点前中、柄杓で水を汲むたびに銀漢の物語が揺らぎ、茶席に詩情を添えます。
作家略歴と制作理念
四代 諏訪蘇山様(1970年京都市生まれ)は、三代 諏訪蘇山様 と塗師・十二代 中村宗哲様 の薫陶を受け、2002年に四代を襲名。青磁を柱に、練込青磁・蛍手・飛青瓷など化学的アプローチを深化させ、「作品には物語を宿し、使い手の心と交わって完成する」という理念を掲げておられます。本作では「大河が天に昇り銀河となる」という壮大なスケールの物語を、静謐な青磁釉の中に封じ込めておられます。
結語
「青瓷銀漢水指」は、翡翠色の静けさの中に銀河の悠遠なる光を映し込んだ逸品です。南宋龍泉窯砧青磁の伝統を忠実に写しながらも、古代中国の銀漢神話を重ねることで、茶席に詩的宇宙を呼び込む道具へと昇華されています。蓋を開け、水面に柄杓を差し入れる一瞬、器内で揺らぐ光が天の川のきらめきを思わせ、見る者の心に広大な夜空を描き出します。四代 諏訪蘇山様 の研ぎ澄まされた造形感覚と釉調制御が結実した本作は、茶会の主題を豊かに膨らませ、静謐と壮大が同居する特別な時間をもたらしてくれることでしょう。
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