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青白磁銀彩陶筥 松川和弘

青白磁銀彩陶筥 松川和弘

通常価格 $565.00
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青白磁銀彩陶筥 松川和弘作(W:9.5cm D:6.0cm H:6.7cm)
――「淡青の静水を、銀の岩肌が護る。直線の箱に、月と石の“質感の対話”を閉じ込めて」


Ⅰ 陶筥という“しまうための舞台”

陶筥は、何かを納める器であると同時に、納めるという行為そのものを美へ変える道具です。蓋を滑らせ、合口が合う瞬間に、空気が一段静まる。開ければ、内側の余白が現れ、しまったものだけでなく、そこに漂う気配までが整って見えてくる。
本作「青白磁銀彩陶筥」は扱いやすい寸法で、掌に収まる一方、長方形のプロポーションによって“置いたときの安定感”が際立ちます。小さいのに、凛として据わる——その佇まいが魅力です。


Ⅱ 青白磁――“白より澄み、青より柔らかい”内なる余白

2-1 内側に広がる淡青:しまうものを清める空間

蓋を外すと現れる見込みは、淡い青の静けさに満ちています。青白磁は色で主張するのではなく、光を柔らかく含み、静かに拡散する肌として働きます。
この内側の淡青は、香や小さな茶道具、金平糖や印章などを納めたとき、収めたものの輪郭を乱さず、むしろ“清浄な背景”として引き立てます。筥の本質は、外側の意匠だけでなく、内側の余白にあります。本作は、その余白が非常に美しい筥です。

2-2 合口の線に宿る温度

身と蓋の境界に走る一本の線には、焼成由来の淡い橙がほのかに覗きます。完全な無垢ではなく、炎と手の痕跡がわずかな温度として残る。その控えめさが、青白磁の清冽さをいっそう際立たせています。


Ⅲ 銀彩――鏡ではなく“岩肌のような光”

3-1 微細な凹凸:銀が光を点で受ける

本作の銀彩は、平滑な金属光ではありません。写真からも見て取れるように、表面には微細な粒立ちと凹凸があり、光を一面で反射するのではなく、点で受けて、柔らかく散らす仕上がりです。
その印象は、月光、霜、雪、あるいは石肌の鈍い輝き。銀が“派手さ”ではなく“質感”として立ち上がるため、筥全体が静謐な気配を保ちます。

3-2 銀と青の対比:冷たさではなく、澄みの二重奏

銀彩が外側の“硬質な光”を担い、青白磁が内側の“静水”を担う。外と内で役割が明確に分かれ、筥はまるで「石と水」のような二重構造になります。
外側は守り、内側は包む。閉じた姿は緊張をつくり、開いた姿は呼吸を与える——筥という形式の面白さが、素材の対比によっていっそう鮮明になっています。


Ⅳ 造形の妙――長方形が生む“余白の方向性”

4-1 正方ではなく長方であること

この筥は、正方形や立方体の“完結”ではなく、長方形の“方向性”を持っています。置いたとき、視線は自然に長辺へ流れ、筥は小さくても伸びやかな余白を感じさせます。
茶の湯の道具組では、長方形の器は床の間の掛物や花入の縦横の関係と呼応しやすく、空間の構成要素として扱いやすい形でもあります。

4-2 角の処理:端正で、やさしい

稜線は鋭すぎず、しかし甘すぎない。角がわずかに柔らかく処理されていることで、銀彩の凹凸の硬質さが強く出過ぎず、全体は端正にまとまります。松川和弘氏の造形は、いつも“強さ”と“抑制”の境界にあり、本作もその美点がよく表れています。


Ⅴ 取り合わせと用途――“清浄”と“質感”の筥

本作は、季節でいえば冬の冴え、早春の薄氷、秋の澄んだ夜気など、「冷たい透明」を伴う頃に特に映えます。銀彩は霜や月として働き、青白磁は水や空気として場を整える。
用途は自在です。香を納めても、菓子や小物を収めてもよい。あるいは何も入れず、余白そのものを保つという使い方さえ成立します。筥は中身を守るだけでなく、心の速度を落とすためにある——本作は、その静かな効能を確かに備えています。


まとめ

青白磁銀彩陶筥は、青白磁の淡い静水と、銀彩の岩肌のような質感を対比させた、静謐で建築的な陶筥です。閉じた姿では銀が場を澄ませ、開けば淡青の余白が現れ、収めるものの気配まで整えてくれる。
“光”と“質感”で空間を調律する、小さな箱の傑作として、茶席にも日常にも、凛とした清浄をもたらしてくれることでしょう。

略歴

1977 大阪府河内長野市生まれ
1998 奈良芸術短期大学陶芸コース卒業
2000 奈良芸術短期大学専攻科修了
2001 京都府立陶工高等技術専門校修了
   近藤高弘氏に師事
2006 独立・河内長野市にて開窯

主な個展・展覧会

2007 京都府美術工芸新鋭選抜展(京都文化博物館)
   二人展(松坂屋名古屋店美術画廊/名古屋)
   個展(京都高島屋美術工芸サロン/京都)
2008 個展(カンパニュール/千葉)
   個展(パラミタミュージアム小ギャラリー/三重)
2009 個展(ギャラリーエスパス/名古屋)
2010 個展(札幌三越美術ギャラリー/北海道)
   個展(松坂屋名古屋店美術画廊/名古屋)
   個展(アルパーク天満屋美術画廊/広島)
2011 個展(陶器ギャラリー風露/大阪)(’07)
2012 個展(ギャラリーおくむら/東京)(’07 ’09)
2013 個展(ラブリーホール開館20周年記念事業/大阪)
2014 個展(天満屋広島八丁堀店アートギャラリー/広島)(’11)
2016 個展(天満屋福山店アートギャラリー/広島)(’08 ’12)
   三人展(博多阪急ミューズ/福岡)
2017 個展(ピナコテーカ/東京)(’14 ’15)
   個展(天満屋岡山店美術ギャラリー/岡山)(’08)
   個展(アトリエヒロ/大阪)
2018 個展(日本橋三越本店美術ギャラリー/東京)
   個展(髙島屋大阪店ギャラリーNEXT/大阪)(’08 ’11 ’15)
2020 個展(花あさぎ/東京)
2021 個展(ギャラリーたちばな/奈良)(’15 ’17 ’19)
2022 二人展(花あさぎ/東京)
2023 二人展(アトリエヒロ/大阪)
2025 二人展(花あさぎ/東京)
   個展(緑ヶ丘美術館/奈良)

受賞歴

第36回日本伝統工芸近畿展(大阪府教育委員会賞)
第55回日本伝統工芸展(日本工芸会総裁賞)

パブリックコレクション

緑ヶ丘美術館

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