天目釉酒盃 岡田優
天目釉酒盃 岡田優
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幅 : 7.0cm 高さ : 5.0cm
天目釉酒盃(てんもくゆう さかずき)
― 岡田優様 作 ―
作品概要
本作は、京都・宇治炭山に窯を構える岡田優様が手掛けられた天目釉酒盃です。比較的低めの筒形を基調に、胴部下端に施された鎬(しのぎ)が静寂な闇にリズムを刻みます。藍鋼色(らんこうしょく)の黒釉には微細な鉄結晶が銀砂のように散り、光の当たり具合で青紫や鈍金(にびがね)の光彩が揺らめき、夜空の星雲を想起させる景観が広がっています。口縁部はうっすらと緋色(ひいろ)を帯び、冷たい宇宙の中にわずかな温もりを宿しています。
釉調と技法
鉄長石系天目釉に微量の酸化コバルトと酸化マンガンを併用し、黒釉に深い藍鋼色と紫灰の光沢を付与しています。
揺らぎ焼成:一次還元で黒味を定着させた後、還元と弱酸化を交互に切り替える岡田様独自の手法により、表層に油滴状の鉄結晶が安定して析出します。
緋色出し:終盤に酸素量をわずかに増やし、口縁部の鉄分を酸化させて紫褐色の薄膜を形成。黒釉とのコントラストで器の輪郭を柔らかく際立たせています。
釉肌:サテン調の半光沢。遠景ではマットに見えながら、接写では金属的な微光が浮かび、多層的な質感を楽しめます。
歴史的・文化的背景
天目釉のルーツは宋代・福建省建窯の黒釉碗にあり、日本には鎌倉期に禅僧がもたらしたとされています。油滴や曜変など偶然の結晶が現れた器は「窯変(ようへん)の妙」として珍重され、茶の湯の世界で高位に賞玩されてきました。鎬の技法は李朝粉引や萩焼にも通じる素朴な装飾で、素地と釉薬の対比を際立たせる日本的アレンジです。本作は、その二つの伝統を融合し、現代的な藍鋼色の光彩へ昇華した点が見どころです。
岡田優様は「土と炎の偶然性を必然へ転じる」を信条に、炎の揺らぎと化学的制御を高度に融合させた作品づくりで高い評価を得ておられます。
美的意図と精神性
鎬が刻む垂直のリズムは、禅の呼吸法「調息(ちょうそく)」を視覚化し、藍鋼色の闇に散る油滴は「夜色無尽」の無限を示唆します。盃を傾けるたびに光が稜線を横断し、液面が星雲のように揺らぎ、飲み干す瞬間には緋色の口縁がほのかに現れ、「一期一会」の余韻を静かに語りかけます。
使い方と鑑賞ポイント
冷酒・常温酒向き:円筒形が香りをほどよく滞留させ、吟醸系の繊細なアロマを引き立てます。
光源の変化:昼光色LEDでは青鋼の金属光が強調され、白熱灯下では油滴が柔らかく銀灰に光ります。照明を替えながら多彩な表情をお楽しみください。
手取りの愉悦:鎬の凸部が自然な指掛かりとなり、滑りにくく安心感のある設計です。
深い藍鋼の闇に銀灰の星屑が瞬く本酒盃は、岡田優様が長年追求されてきた「制御された偶然」の結晶です。掌中で光と酒が織りなす無限の宇宙を味わいながら、静謐な酒席のひとときをお楽しみいただければ幸いです。
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