天目釉酒盃 岡田優
天目釉酒盃 岡田優
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幅 : 8.1cm 高さ : 5.1cm
天目釉酒盃(てんもくゆう さかずき)
― 岡田優様 作 ―
作品概要
本品は、京都・宇治炭山に窯を構える岡田優様が手掛けた天目釉酒盃です。抑えた紫灰色の地に帯状の窯変が重なり、柔らかな光沢とマット感が交錯することで、深遠な景色を湛えています。胴部に三段の凹凸を持たせた造形が、釉薬の流れを緩やかにせき止め、層状の色幅と濃淡を際立たせています。
釉調と技法
揺らぎ焼成:長石系天目釉に高純度鉄分を加え、一次還元で黒味を出した後、還元と酸化を交互に切り替える岡田様独自の「揺らぎ焼成」を採用。これにより紫灰・紅紫・青墨といった複雑な色層が出現します。
段差と窯変:段ごとに温度勾配がわずかに変化するため、凹部では鉄結晶が細かく析出し銀灰に光り、凸部では溶融が進んでやや艶を帯びた紫黒を成します。
質感:表面はサテン調の半光沢で、手触りは絹のように滑らか。それでいて指先にはほんのりと吸い付く感覚があり、掌中に納まる安心感を演出します。
歴史的背景
天目釉は宋代・福建省建窯の黒釉碗を源流とし、日本の禅僧がもたらした文化財「天目茶碗」に由来します。油滴や曜変など偶然の結晶表現が尊ばれ、「窯変の妙」として茶の湯文化に深く根づきました。本作が纏う紫灰の景色は、なかでも稀少とされる「灰被(はいかつぎ)天目」に通じる色味であり、伝統と現代技術の邂逅が生み出した新たな表情と言えます。
美的意図と精神性
三段の段差は「山川の層理」を象徴し、人智が及ばぬ自然の歳月を表現しています。紫灰に潜む金属的な微光は、禅の「幽玄」に通じる静けさと無限を示唆し、杯を傾けるひとときに精神を内省へと誘います。
使い方と鑑賞ポイント
冷酒~微温燗向き:マット寄りの釉肌が酒の温度を穏やかに保ち、香りをふわりと立ち上げます。
照明による変化:斜光のもとでは段差が強調され、銀灰の結晶が浮かび上がります。暖色光では紅紫が滲み、時間帯や光源を変えて楽しむのがおすすめです。
手取りの愉悦:段差部が指掛かりとなり、片手で持った際の収まりが良好です。
段差のリズムがもたらす豊かな陰影と、紫灰の奥に潜む銀の煌めき──。本酒盃は、岡田優様が追求し続ける「窯変美」の深化を示す一盃です。掌中で移ろう色彩と質感を味わいながら、静かな宇宙を覗き込むような酒席のひとときをお楽しみください。
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作品ごとに、出来るだけ詳細をご確認いただけるように画像を掲載しておりますが、ご不明な点はお問い合わせください。
作品の色合いなどは、画像を表示する環境により若干異なることがございますが、ご理解の程お願いいたします。
作品により貫入などによる、茶碗への染み込みが発生することがございますが、それも経年変化の味わいとしてご理解いただきますようお願いいたします。