鉄絵茶盌 藤平伸
鉄絵茶盌 藤平伸
幅14.5cm ×14.5cm 高さ8.5cm
端正な気品と詩情が宿る茶盌
「鉄絵茶盌」は、藤平伸様の独特な感性が凝縮された一品です。その端正で気品ある姿は、見る者に静謐な印象を与えつつ、不思議なオーラを漂わせています。詩情豊かな陶の遊び心が、この茶盌にも深く反映されています。
鉄絵技法の魅力
鉄絵とは、酸化鉄を含む顔料を使い、陶磁器に文様を描く技法です。釉薬をかけて焼成することで、鉄分の成分が変化し、赤黒い錆色から黄褐色、黒色まで幅広い色調が表現されます。「鉄絵茶盌」では、この技法を活用し、筆の動きがそのまま生きた自然で自由な文様が描かれています。焼成による偶然性と制御された美の絶妙なバランスが、茶盌に独特の表情を与えています。
轆轤と手捻りの融合による造形
藤平伸様は茶碗制作において、轆轤と手捻りを組み合わせる独自の方法を採用しました。胴体部分は轆轤で成形し、気に入らない底の部分を切り取って、手捻りで高台を仕上げるという斬新な手法です。これにより、轆轤の硬質な直線性と手捻りの柔らかな自然さを組み合わせた、力強くも優しいフォルムが実現しています。藤平独自のこの技法が、「鉄絵茶盌」に唯一無二の存在感を与えています。
茶陶への挑戦と遊び心
藤平伸様は、40年以上の陶芸人生であえて茶陶から距離を置いてきましたが、1993年の京都・茶道資料館での個展「藤平伸 ―茶陶に遊ぶ」を機に、新たな挑戦を始めました。この作品は、「自由に作る」精神のもと生まれたもので、藤平様らしい遊び心と独創性が光る一品です。茶陶という伝統的なジャンルに挑むことで、陶芸の新たな可能性を示した彼の姿勢が、この茶盌から感じ取れます。
詩的な造形美の背景
京都の五条坂に生まれ、陶芸の伝統とともに育ちました。病気療養中に培った絵画的な感性と独自の技法を組み合わせ、詩情豊かな作品を数多く生み出しました。「陶の詩人」と称される彼は、動物や植物、人物などの具象的なモチーフを使いながら、自然体でありながら洗練された作品を制作。茶盌もその例外ではなく、詩的な世界観と自由な発想が存分に表現されています。
鉄絵茶盌の魅力
この「鉄絵茶盌」は、実用的な茶器であると同時に、藤平伸様の芸術的探求の成果を体現した作品です。手に持つときの絶妙な軽さ、唇に触れる際の滑らかさ、そして文様の奥深い味わいが、日常の茶の湯に特別なひとときをもたらします。藤平様の遊び心と職人技が融合したこの茶盌は、見る者、使う者の心を捉えて離さない作品です。「鉄絵茶盌」は、藤平伸様が自由で洒脱な発想で生み出した新しい茶陶の形です。その端正な造形と鉄絵の柔らかな文様が織りなす調和は、茶道の場だけでなく、観賞用としても魅力を放ちます。この茶盌は、伝統と革新、そして詩情の融合を実現した傑作といえるでしょう。
藤平伸様 来歴
1944 京都高等工芸学校に入学 病気のため中途退学
1945 藤平陶芸にて作陶
1957 第13回 日展にて特選・北斗賞受賞
1960 イタリア・フィレンツェ国際陶芸展
1963 第6回新日展にて菊花賞受賞 京都府文化功労賞受賞
1968 現代陶芸の新世代展 陶芸の現在-京都から展
1970 現代の陶芸ヨーロッパと日本展
1973 日本陶磁協会賞受賞
1974 中南米巡回展
1976 東独巡回日本陶磁名品展
1978 西ドイツ巡回日本陶磁名品展
1982 アメリカ・カナダ巡回展
1983 現代日本の工芸展
1985 現代日本美術の展望展
1990 京都美術文化大賞受賞
1991 京都市文化功労賞受賞
「本作品は未使用の新作です。現在、藤平伸記念館で保管されています。ご購入の際はご子息である藤平寧様が真作の証明として共箱を制作いたします」
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作品ごとに、出来るだけ詳細をご確認いただけるように画像を掲載しておりますが、ご不明な点はお問い合わせください。
作品の色合いなどは、画像を表示する環境により若干異なることがございますが、ご理解の程お願いいたします。
作品により貫入などによる、茶碗への染み込みが発生することがございますが、それも経年変化の味わいとしてご理解いただきますようお願いいたします。