3奈良絵茶碗 尾西楽斎
3奈良絵茶碗 尾西楽斎
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幅 : 14.4cm 高さ : 6.9cm
尾西楽斎様の奈良絵茶碗は、桃山の土味と奈良絵の雅趣を軽やかに結晶させた一碗です。白化粧の上で極彩色が帯状に展開する姿は、絵巻物を巻き上げたかのような動感を見せ、抹茶碗としての機能と物語性を兼ね備えています。以下では、その魅力を五つの側面からご紹介いたします。
1.造形と胎土
高台をやや小さく絞り込んだ端正な碗形は、見込みから口縁まで緩やかに広がるため、茶筅が自然と回転し細やかな泡を生み出します。胎土には鉄分を多く含む荒土を用い、焼成時に生まれる斑点や焦げが「わび」の景色を醸し出します。外側下部には素地を露わにし、桃山陶の荒々しさを思わせる粗い肌理が生きています。
2.釉調と色彩設計
素地全体を淡い白化粧で包み込み、その上から透明釉を掛けることで、白地にほんのりと温かいクリーム色が透ける柔和な表情が得られました。肩部を境に施された藍の呉須帯は、視覚的に器を引き締め、抹茶の緑色との補色関係で鮮烈なコントラストを生み出します。口縁を巡る鉄釉の錆色は、上絵の彩度を高める“額縁”の役割を果たしています。
3.奈良絵意匠の物語性
白化粧の帯状部分に描かれた奈良絵は、古都奈良の王朝文化を象徴する三要素――
宮廷貴人の涼亭
朱衣をまとった貴人が簾の奥で雅楽を聴くかのように佇み、茶席に平安の雅を呼び込みます。
常盤の松と梅
松は不変・長寿を、梅の紅白点描は再生・春告を象徴し、年中祝祭の気配を漂わせます。
道化の楽人
帯の終わりにあらわれる楽人(あるいは舞楽の演者)は、茶席に音曲のリズムを暗示し、碗を回すたびに物語が進行していく仕掛けになっています。
これらのモチーフを、尾西楽斎様は極細の鉄絵線と、銅緑・辰砂・黄土などの和絵具で軽妙に描写し、絵巻物さながらの連続性を生んでいます。
4.技法的妙味
二層化粧と拭き取り
胎土の荒肌をあえて薄く透かせるため、白化粧を塗布した後、スポンジで部分的に拭い取る手法を採用しています。これにより、雪の残る土原のような幽玄の景が現れます。
重ね焼きの景色
内面には重ね焼きの支痕が淡く残り、茶人が好む「窯の痕跡」をさりげなく留めています。
上絵の耐久性
絵付後に本焼成しているため、色彩が釉中に程よく沈み込み、長年の使用にも色褪せにくい仕様です。
5.茶席での機能美
内側は無垢の白釉が晴やかで、抹茶の翡翠色が鏡面のように映えます。呉須帯の青と抹茶の緑、外側の朱・緑・黄が、手に持った際に即興の配色ハーモニーを作り出し、客に差し出す瞬間の視覚効果を高めます。また、軽量で重心が低いため取り回しが安定し、裂地の上でも滑りにくい実用性を備えています。
荒土の「侘び」と奈良絵の「雅」。この二つの異質な美意識を、呉須帯と鉄縁で巧みに統合した点こそ、尾西楽斎様の奈良絵茶碗ならではの醍醐味です。茶席に据えれば、客は碗をめぐらせるごとに物語を読み解き、土肌と色絵のコントラストを味わいながら、ひと椀の中に広がる“時空の旅”を堪能することでしょう。
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作品ごとに、出来るだけ詳細をご確認いただけるように画像を掲載しておりますが、ご不明な点はお問い合わせください。
作品の色合いなどは、画像を表示する環境により若干異なることがございますが、ご理解の程お願いいたします。
作品により貫入などによる、茶碗への染み込みが発生することがございますが、それも経年変化の味わいとしてご理解いただきますようお願いいたします。