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2呉器形春日絵茶碗 尾西楽斎

2呉器形春日絵茶碗 尾西楽斎

通常価格 $1,997.00
通常価格 セール価格 $1,997.00
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幅 : 11.3cm 高さ : 7.8cm

尾西楽斎様が手掛けられた本作は、「呉器形」という朝鮮李朝の飯茶碗に由来する力強いフォルムと、雅趣あふれる春日絵の彩色とを巧みに融合させた一碗です。実際に手に取りますと、素地の量感と絵付けの軽妙さが見事に均衡し、茶道具に求められる“用の美”と“語らいの美”が同時に立ちのぼる作品であることが実感できます。


1.造形美 ― 呉器形の骨太なフォルム

端正な鉢形
やや肉厚に立ち上がる見込みと、緩やかに反った口縁が、抹茶の泡をふくよかに受け止める理想的なプロポーションを形成しています。

裂足高台
呉器形特有の三方割高台(裂足)は、朝鮮半島から伝来した飯碗の名残をそのまま写し取りつつ、現代の抹茶碗としての安定感を確保しています。手指に沿う凹凸が生まれるため、茶席での取り回しが極めて安定する点も見逃せません。

白釉の光沢
素地全体を覆う半透明の白釉は、しっとりとした光沢を放ち、抹茶の青磁色を美しく映えさせます。口縁部と高台脇にわずかに現れた鉄風の焦げは窯変の妙趣を添え、あたかも枯淡の景色を額装するかのようです。


2.意匠 ― 春日大社をめぐる祝祭図

朱塗りの鳥居と松の緑
茶碗の正面には、春日大社の象徴である朱鳥居がくっきりと描かれ、その傍らには常盤緑の松が配されています。朱と緑の補色効果が、白釉の上で鮮やかに共鳴し合います。

鹿と行列
春日大社の神使である鹿が、若草山を思わせる地紋のなかを軽やかに歩く姿が愛らしく表現され、祭礼行列の人物たちは軽妙な筆致でリズミカルに並びます。紫衣・青衣・緑衣という三色の衣裳が、抹茶碗内部の緑と呼応して視覚的な奥行きを生み出します。

朱傘(唐傘)のアクセント
行列の要である朱傘は、古式ゆかしい宮廷文化を象徴し、同時に茶席の客人に対する祝福の意を示しています。この朱が茶碗全体の色調を引き締める“火灯”の役割を果たしています。


3.技法 ― 京焼の洗練と遊び心

尾西楽斎様は、京焼の伝統的な五彩(赤・緑・紫・黄・紺)を基調としながら、筆線をあえて崩さず、伸びやかで端整な輪郭を保っておられます。人物の面貌は胡粉の白で軽く盛り上げ、微妙な緊張感を残しつつも親しみやすい表情を引き出しています。さらに、細部の緑葉には鉄絵具を下地に施し、その上から銅緑を重ねることで奥行きを演出するという、手間の掛かる二段階彩色を用いています。


4.茶席での機能美

見込みの白と抹茶の緑
内側はほぼ無地の白釉で統一され、抹茶の艶やかな緑が存分に映えます。茶筅の当たりも滑らかで、泡立ちが細やかに仕上がります。

語りの愉しみ
茶碗を回しながら見るたびに、行列の進行や鹿の遊ぶ姿が次々と現れるため、亭主が客へ物語を語り掛ける“絵巻物”のような演出が可能です。


5.文化的背景と現代性

春日大社は藤原氏の氏神として平安貴族の信仰を集め、日本美術においても鹿や藤、鳥居といったモチーフが重層的意味を帯びて描かれてきました。本作はその図像学的伝統を踏まえつつ、呉器形という異文化的フォルムを掛け合わせることで、“日本的古典”と“朝鮮的素朴”の二重構造を作り上げています。結果として、古典回帰ではなく《越境的な再創造》を体現し、現代の茶人が自由に物語を紡げる器へと昇華させています。

呉器形の骨太な存在感に、京焼春日絵の洗練された彩色――この重奏が尾西楽斎様独自の時代感覚を鋭く映し出しています。茶席に据えれば、一碗でありながら祭礼絵巻を広げたかのような豊かな世界がひらけ、客人との対話を深める格好の“舞台装置”となることでしょう。

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