灰釉緑彩茶盌 猪飼祐一
灰釉緑彩茶盌 猪飼祐一
幅 : 11.6cm 高さ :7.8cm
猪飼祐一様が手掛けた「灰釉緑彩茶盌」は、その独自性と技術の融合によって生まれた逸品です。この茶盌は、灰釉で一度焼成し、その後に緑の釉薬を重ねて再び焼成されたものであり、その結果として、織部の緑色が美しく浮かび上がっています。本来、灰釉と織部の緑が同じ窯で同時に出ることは珍しいため、プロの目から見ても「なぜこの織部の緑が出ているのか?」と驚かれるほどの仕上がりです。
灰釉の歴史と技法 灰釉は、古代から連綿と使用されてきた最も基本的な釉薬の一つです。植物灰を材料とし、高火度で焼成することで独特の色合いと質感を生み出します。奈良・平安時代には、猿投窯を中心に東海地方で製作され、中世瀬戸窯や近世、そして近現代に至るまで、様々なやきものに使われ続けています。この茶盌では、灰釉の伝統的な技法が巧みに取り入れられ、その深い歴史を感じさせる作品となっています。
織部の緑と灰釉の共存 織部の緑は通常、特別な条件下でしか発現しない色彩です。しかし、猪飼祐一様は、その緑を灰釉の中に巧みに取り込み、新しい色感覚を引き出すことに成功しています。これは、窯変を強く意識した焼成方法と、施釉の厚みによるもので、猪飼様の卓越した技術と感性が反映されています。このような独特の色彩変化は、見る者に強い印象を与え、同時に茶盌としての魅力を一層高めています。
自然美と技術の融合 「灰釉緑彩茶盌」は、猪飼祐一様の技術と自然の力が見事に融合した作品です。灰釉の独特の質感と、織部の緑が織りなす色彩の調和は、まるで自然界の美しさを映し出しているかのようです。また、焼成過程で生じる窯変が、茶盌に独自の表情を与え、一つとして同じものがない唯一無二の作品に仕上げられています。
鑑賞と実用の美 この茶盌は、鑑賞用としても、茶の湯の実用としても高い価値を持っています。口縁から胴部、底部に至るまで、全体にわたる美しい造形と色彩の変化が、見る者の心を捉えます。また、手に取ったときの重さや質感、茶を注いだときの風合いが、日々の茶の時間に豊かな感覚をもたらしてくれるでしょう。
猪飼祐一様の「灰釉緑彩茶盌」は、伝統と革新が調和した、まさに現代の名品です。その美しさと奥深さは、使い込むほどに味わいが増し、長く愛されることでしょう。
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作品により貫入などによる、茶碗への染み込みが発生することがございますが、それも経年変化の味わいとしてご理解いただきますようお願いいたします。