油滴天目盃 竹村繁男
油滴天目盃 竹村繁男
幅 : 9.8cm 高さ :3.8cm
油滴天目盃の魅力と小ぶりながら放つ圧倒的な存在感
竹村繁男様の「油滴天目盃」は小ぶりながらも、油滴天目特有の美を存分に表現した魅力的な盃です。光の角度によって銀色や虹色に輝き、見る者をまるで星空を眺めているかのような幻想的な世界へ誘います。黒地に浮かぶ斑紋が盃全体に広がり、その中に神秘的な宇宙の広がりが感じられる一品です。
油滴と曜変:斑紋が生み出す幻想的な美
「油滴」とは、鉄釉の中に含まれる金属成分が焼成中に釉薬表面に浮かび上がり、斑点模様となる現象を指します。この模様が虹色に輝く場合には「曜変」と呼ばれ、特に珍重されます。漆黒の釉薬が施されたこの盃の内外面には、銀色の斑紋が浮かび上がり、光を受けて独自の美しさを放つことから「油滴」の名がつけられました。その模様が油の滴のようであり、器に映える幻想的な輝きは、日本の茶人や美術愛好家たちにとっても特別な意味を持ち続けています。
油滴天目の起源とその歴史的背景
油滴天目の技法は、12世紀から13世紀の南宋時代、中国南部の建窯(けんよう)で生まれたとされています。建窯で焼かれた天目茶碗の斑紋は玉虫色に光る油の滴のような模様が特徴で、これは窯内での特殊な条件下で自然に形成される模様です。当時の中国では、黒地の器が「茶の湯」に好まれ、特に斑紋の美しい器が高く評価されました。この建窯の天目茶碗はその後、宋代から元、明にかけて流行し、特に「曜変天目」として知られる虹色に輝く器は貴族や皇帝の間で珍重され、現在では数点しか現存していない幻の名器として名を馳せています。
日本茶道における天目茶碗の歴史的な位置づけ
日本には鎌倉時代の禅僧たちによって、建窯で焼かれた天目茶碗が伝わりました。特に禅宗の拠点であった浙江省天目山に留学した僧侶が、この器を茶道具として日本に持ち帰り、室町時代には足利義政らによって「天目」として珍重されるようになります。こうした天目茶碗は、単なる日常用の器ではなく、茶道の「わび」「さび」の美意識を象徴するものとして発展しました。天目釉を用いた器が茶人や武将たちに愛された背景には、その黒釉の深みと金属的な輝きが持つ、静謐で神秘的な魅力がありました。
天目釉の成り立ちと技法
天目釉には、長石や石灰岩、鉄分を含む釉薬が使用され、窯の中での焼成方法により色合いや模様が変わります。天目釉は黒釉として知られ、釉薬の鉄分が1〜2パーセントの含有量であれば青磁、15パーセント以上であれば黒磁となり、さらにその釉薬内の鉄分量によって飴色の釉(飴釉)や柿色の釉(柿釉)などと区別されます。また、この釉薬の含有成分や温度管理の調整が難しいため、斑紋の美しさを出すには高度な技術が要求されます。
竹村繁男様の油滴天目盃に見る、伝統と現代の融合
京都府山科生まれの竹村繁男様は、京都府指定無形文化財保持者の木村盛伸先生に師事し、自然灰釉の第一人者として独自の技術を築いてきました。油滴天目盃は、南宋時代から続く伝統技術を受け継ぎつつ、現代においても通用する美を表現した作品です。盃の中に広がる斑紋とその深みのある輝きは、数十年にわたり研鑽を積んできた結果であり、作品には自然の灰を使った釉薬の奥深さと陶芸への情熱が感じられます。
「油滴天目盃」は、古の中国から受け継がれた伝統を現代に再現し、さらに独自の美を付加することで、新たな芸術性を生み出しています。この盃は、黒地に浮かび上がる銀色の斑紋が見る角度によって異なる表情を見せることから、鑑賞者に深い感動をもたらし、その存在感と美しさは圧倒的です。
竹村繁男 略歴
昭和二十八年 : 京都府山科生まれ
昭和四十七年 : 京都市立日吉丘高校陶芸科卒業-木村盛伸先生に師事
昭和五十年 : 第四回日本工芸会近畿支部展 初入選
昭和五十三年 : 京都府工芸美術展 入選
昭和五十五年 : 独立し山科に大日窯を開窯
昭和六十三年 : 第三十五回日本伝統工芸展 入選
平成元年 : 「土の子会」結成
平成二年 : 第三十七回日本伝統工芸展 入選
平成八年 : 第二十五回日本伝統工芸近畿展 奨励賞
平成十年 : 第五十三回新匠工芸会展 入選
平成十三年 : 京都工芸美術作家協会展,京都「高島屋」にて個展
平成十四年 : 第四十九回日本伝統工芸展 入選
平成十五年 : 岡山高島屋画廊にて個展
平成十七年 : 横浜高島屋美術画廊にて個展
平成十八年 : 京都高島屋美術画廊にて個展
平成十九年 : 第三十六回日本伝統工芸近畿展 京都府教育委員会教育長賞
日本工芸会正会員認定
岡山高島屋画廊にて個展
平成二十年 : 日本工芸会陶芸部会正会員による第三十六回新作陶芸展 日本工芸会賞
平成二十一年 : 第五十六回日本伝統工芸展 入選
平成二十二年 : 第三十九回日本伝統工芸近畿展にて鑑査委員に就任
平成二十六~三十年年 : 日本伝統工芸近畿展 入選
令和元年~六年 : 日本伝統工芸近畿展 入選
令和五年 : 日本伝統工芸展 入選
令和六年 : 日本伝統工芸展 入選
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