紅斑釉茶盌　竹村繁男

幅 : 11.0cm     高さ :8.5cm

繊細で優雅な紅斑釉の色彩

竹村繁男様の「梅紅斑釉茶盌」は、彼が丹念に作り出した自然釉薬の一つである紅斑釉（こうはんゆう）によって、淡く優雅なピンク色の表情を持つ名品です。紅斑釉には、毎年剪定される葡萄の枝から得られた灰が使われ、窯の中で焼かれることで、見る角度によって変化する独特の色彩が浮かび上がります。この薄い青色に仄かに見える赤の表情が繊細で、さらに見つめれば見つめるほど、その美しさと豊かさを感じられます。

端正で力強いフォルム

この茶盌の形状は非常に端正であり、全体として堂々とした印象を与えます。安定感のある形でありながら、どこか繊細な表現も内包しており、茶陶としての美学が存分に生かされています。竹村繁男様は形状の魅力を最大限に引き出しながら、色彩と形状の調和を実現しており、この作品はまさに茶陶の傑作といえるでしょう。

土の力強さと釉薬の温かみの融合

「梅紅斑釉茶盌」は、その土の力強さと釉薬の温かみが相まって、まさに圧倒的な存在感を放っています。竹村様の作品には、自然素材の釉薬が持つ温かみと力強さが共存しており、器としての実用性と芸術的な価値の双方を兼ね備えています。竹村様の灰釉作品に特徴的な自然な色彩の鮮やかさが、茶盌としての形状の安定感とともに見る者を魅了します。

紅斑釉 － 豊かな自然の彩り

紅斑釉は、竹村様が大切にしている自然灰釉のひとつで、葡萄の枝から生まれるピンクの淡い色が特徴です。竹村様の灰釉は、灰の性質を最大限に引き出し、またその扱いに長年の経験と技術が込められています。紅斑釉は、ただの釉薬ではなく、自然への深い敬意とともに作陶されており、器ごとに異なる表情が魅力です。

陶芸家・竹村繁男様の歩みと情熱

京都府山科に生まれ、京都府指定無形文化財保持者の木村盛伸氏の指導のもとで陶芸を学びました。京都市立日吉ヶ丘高校陶芸科を卒業した後、18歳で弟子入りし、陶芸の技術を8年間にわたり学びました。昭和55年に独立し、現在の場所で「大日窯」を開き、自身の作品作りを続けています。30年以上にわたり、様々な植物や木の灰から釉薬を自ら作り出すという独自の手法を実践しており、その情熱と深い知識は作品に反映されています。

自然灰釉の第一人者としての竹村繁男様

釉薬作りの技法は、古代中国にまでさかのぼる伝統的な手法を取り入れたものであり、その一貫した取り組みは自然灰釉の第一人者たらしめています。釉作りは、植物の灰を水に溶かし、何度も水を取り替えて不純物を取り除くといった繊細な作業が必要であり、灰釉が完成するまでには長い時間と手間がかかります。トラック数台分の植物や木の枝から得られる灰はごくわずかですが、その灰を用いて自然の色彩を器に宿らせています。

自然の美しさと現代的な感性が共鳴する梅紅斑釉茶盌

梅紅斑釉茶盌は、自然灰釉の美しさを現代の感性で表現した作品であり、ただの器を超えた芸術作品としての存在感を持ちます。紅斑釉の淡いピンク色が醸し出す優雅さと、土の力強さが見事に調和し、竹村様の作陶への情熱と技術が凝縮されたこの作品は、現代陶芸においても極めて高い評価を得ています。

竹村繁男 略歴

昭和二十八年 : 京都府山科生まれ
昭和四十七年 : 京都市立日吉丘高校陶芸科卒業-木村盛伸先生に師事
昭和五十年 : 第四回日本工芸会近畿支部展 初入選
昭和五十三年 : 京都府工芸美術展 入選
昭和五十五年 : 独立し山科に大日窯を開窯
昭和六十三年 : 第三十五回日本伝統工芸展 入選
平成元年 : 「土の子会」結成
平成二年 : 第三十七回日本伝統工芸展 入選
平成八年 : 第二十五回日本伝統工芸近畿展 奨励賞
平成十年 : 第五十三回新匠工芸会展 入選
平成十三年 : 京都工芸美術作家協会展,京都「高島屋」にて個展
平成十四年 : 第四十九回日本伝統工芸展 入選
平成十五年 : 岡山高島屋画廊にて個展
平成十七年 : 横浜高島屋美術画廊にて個展
平成十八年 : 京都高島屋美術画廊にて個展
平成十九年 : 第三十六回日本伝統工芸近畿展 京都府教育委員会教育長賞
    日本工芸会正会員認定
    岡山高島屋画廊にて個展
平成二十年 : 日本工芸会陶芸部会正会員による第三十六回新作陶芸展 日本工芸会賞
平成二十一年 : 第五十六回日本伝統工芸展 入選
平成二十二年 : 第三十九回日本伝統工芸近畿展にて鑑査委員に就任
平成二十六～三十年年 : 日本伝統工芸近畿展 入選
令和元年～六年 : 日本伝統工芸近畿展 入選
令和五年 : 日本伝統工芸展 入選
令和六年 : 日本伝統工芸展 入選