双蜻花入 小川文齋
双蜻花入 小川文齋
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幅 : 21.0cm×11.0cm 高さ : 31.0cm
双蜻花入(そうせい はないれ)― 六代 小川文齋(興)作
一対の蜻蛉(とんぼ)が軽やかに羽ばたきながら、まるで時を超えて舞い降りたかのように、両肩に広がる美しい造形。六代 小川文齋様による「双蜻花入」は、写実と装飾、伝統と遊び心が見事に溶け合う、まさに“和と飛翔”の象徴ともいえる花入です。見る者の目を引きつける大胆な構成と繊細な表情が共存する本作は、現代陶芸の中でもひときわユニークな存在感を放っています。
生きた造形としての「とんぼ」
本作最大の見どころは、何と言っても両肩に配された「双蜻」の装飾。立体的に飛び出すかのようなフォルムは単なる意匠にとどまらず、陶器という静的な素材に“生命のリズム”を吹き込んでいます。細やかな文様が施された羽根は、一見幾何学的でありながら、どこか手作りの温もりも宿し、蜻蛉の翅が陽光を受けて煌めく様を想起させます。
小川文齋様にとって「とんぼ」は、決して偶然のモチーフではありません。幼少期より父・五代文齋の作品に馴染み、その代名詞であった「赤」を継がず、「緑」に魅せられてきた六代目は、やがて一匹のとんぼとの邂逅をきっかけに、その存在を自身の作品の象徴とするに至ります。
ある日、庭に舞い込んできたとんぼが、まるで語りかけるように指に止まり、「遠慮せんと使えよ」と亡き父の声が心に響いたというエピソード。それをきっかけに作品には次々ととんぼが現れ始め、本作「双蜻花入」はその集大成とも言える造形美を誇ります。
優美とユーモアの同居
作品全体は細身のフォルムでありながら、腰のくびれと裾広がりのバランスが絶妙で、視覚的にも安定感を与えています。淡い褐色の肌合いは、土のぬくもりを感じさせる素朴さを持ちつつ、中心に施された白い帯状の装飾が作品にモダンな印象を与えています。その帯には円環文様が刻まれており、「和」や「輪」といったテーマを暗示するものとしても読み取れるでしょう。
一見すると異国的なデザインにも思えるフォルムながら、細部の緻密な仕事と素材感はまさに京焼の正統を感じさせ、日本的な“間”や“余白”が全体を調和へと導いています。
蜻蛉の羽は左右対称に配されているものの、それぞれにわずかな表情の差があり、機械的でない自然な揺らぎが美しい。見る角度によってその印象は刻々と変化し、まるで空間の中で「とんぼが今まさに飛び立とうとしている」瞬間をとらえたような生きた感覚が生まれます。
文齋窯の系譜と六代目の挑戦
この「双蜻花入」が生まれた背景には、文齋窯の長い歴史があります。初代・小川文助が九州で築窯技術を修得し、1847年に「文齋」として創業してから170余年。五条坂に窯を築いたのは1873年のことでした。以降、六代にわたり京焼の伝統を受け継ぎ、現代に至るまでその技と精神は脈々と継承されています。
六代目・小川文齋(興)様は、彫刻を学び、さらに京都の陶芸技術を徹底的に学び直すことで、より自由で立体的な造形に挑戦してきました。伝統に甘んじることなく、日展への挑戦や個展、さらには日常の器や空間オブジェにまで視野を広げて制作を続ける姿勢は、まさに“継承と革新”を体現しています。
「平和を願いながら、美しいと思うものを全力で作っていく」
この言葉に込められた想いが、まさにこの「双蜻花入」に宿っているのです。
自然とつながる暮らしの中で
とんぼは「勝虫(かちむし)」として古来より縁起のよい存在とされる一方、清らかな水辺に住むことから、浄化や再生の象徴でもあります。この「双蜻花入」は、そうした自然への敬意と人と人との輪を結ぶ祈りを、一つの形に昇華させた作品です。
和室に据えれば静謐な格調を湛え、洋間ではモダンなオブジェとして異彩を放ちます。まさに空間と時代を超える、唯一無二の花入。
二匹の蜻蛉が結ぶ、記憶と願いのかたち。
六代 小川文齋様の“緑の精神”がここに、かたちとなって羽ばたきます。
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