白彩花壷 小川文齋(五代)
白彩花壷 小川文齋(五代)
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幅 : 16.0cm×16.0cm 高さ : 17.0cm
白き静寂に宿る祈りのかたち
五代 小川文齋 様 作《白彩花壷》
五代 小川文齋様による《白彩花壷》は、ただ静かにそこに在るだけで、空間全体を浄化するような神聖さを放つ作品です。土味のあたたかみを残しつつ、控えめでありながらも深い光沢を湛えた白釉が、まるで雪解けの大地を思わせるように、繊細な陰影を生み出しています。この花壷は、日々の営みの中にそっと寄り添いながら、見る人に静けさと安らぎを届けてくれる存在です。
釉肌は一見すると均質な白に見えますが、実際には幾層もの釉薬が溶け合い、内包された鉄分や土の個性がほんのわずかに顔を覗かせています。自然光のもとでは優しく乳白色に輝き、陰影の中では鈍く金属質の反射を見せるなど、光の変化に応じてさまざまな表情を映し出します。表面には小さな貫入や粒子のきらめきが現れ、それがまるで器そのものが呼吸しているかのような生命感を与えています。
壷のかたちは全体として穏やかな卵形をなし、肩の張りと胴のふくらみ、そして下部に向かう柔らかな収まりが、まるで母体のような安堵感を醸し出しています。この造形は、花を生けたときに自然と花姿を引き立てる理想的なバランスを実現しており、花器としての実用性と造形美が見事に両立しています。
静けさの中に潜む美の核心
五代 小川文齋様が得意とされたのは、派手さを抑えた中に宿る、精神性の深い美です。本作《白彩花壷》においても、華やかさや装飾性は控えめに、むしろその余白と静謐さの中に「用の美」と「祈りのかたち」を託しておられます。
白という色は、汚れを恐れずすべてを受け入れる包容力を持つと同時に、厳しさと潔さをも象徴しています。この作品において白は、ただ清潔で美しいというだけでなく、五代様が大切にされた「和をもたらす器」という理念を最も端的に体現した色であるといえるでしょう。
また、ろくろ目のわずかな痕跡や、焼成中に自然に現れた微細なゆがみなどが、手仕事ならではの息づかいを残しており、そこにこそ真の美が宿るという五代様の作陶哲学が滲み出ています。
作家略歴 — 五代 小川文齋 様の足跡
五代 小川文齋様(本名:小川 欣二 様)は、昭和元年に京都五条坂において、四代文齋様の次男としてお生まれになりました。1950年、日展初入選を皮切りに、現代日本陶芸展第一席、日展特選・北斗賞、文部大臣賞など、数多くの受賞を重ね、日本の現代陶芸界を代表する存在となられました。
1974年にはフランス・ヴァロリス国際陶芸展にてグランプリを受賞されるなど、その才能は世界にも広く認められました。1991年に五代文齋を襲名された後は、京都芸術短期大学(現・京都芸術大学)の学長として後進の育成にも力を尽くされ、「伝統は常に問い直されるべき精神である」という理念のもと、教育と作陶の両面で精力的にご活躍されました。
六代 小川文齋 様へと継がれる志
現在は、六代 小川文齋様(興 様)がその系譜と精神を引き継ぎ、文齋窯を継承されております。五代様の代では「赤」の釉薬が多用され、情熱と生命力が表現されておりましたが、六代様は「緑」に象徴されるやわらかで平和的な表現を主軸とされております。いずれの代においても「色」は単なる表面装飾ではなく、作家の生き方と精神の表れであることを、この《白彩花壷》もまた物語っております。
終わりに — 白の中に宿る、無限の景色
五代 小川文齋様による《白彩花壷》は、静謐にして格調高い佇まいをもつ、まさに“用と美”が結晶した作品です。その控えめな色彩と有機的なかたちは、時代や流行を超えて、永く愛され続ける器の本質を示しています。
どうぞこの一壷を通じて、五代様が陶に託された祈りと精神性、そして受け継がれる文齋の美の系譜を、ゆっくりと味わっていただけましたら幸いです。
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作品により貫入などによる、茶碗への染み込みが発生することがございますが、それも経年変化の味わいとしてご理解いただきますようお願いいたします。