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鉄釉水指 小川文齋

鉄釉水指 小川文齋

通常価格 $630.00
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幅 : 17.0cm×17.0cm 高さ : 17.0cm

鉄釉水指(てつゆうみずさし)
― 六代 小川文齋(興) 作

この「鉄釉水指」は、六代 小川文齋(興)様の手による、静けさと力強さが同居する気品高き一作です。鉄釉の持つ重厚な光沢に、緑釉がわずかに滲み流れる様が相まって、まるで深山にひそむ泉のような気配を漂わせています。蓋に施された縄目の把手は実用性を超え、古の器物を想わせる造形的なアクセントとなっており、茶室の空間に独自の陰影と風格を添えてくれることでしょう。

艶やかでありながらも、決して華美に陥らず、しっとりとした肌合いが視覚的にも触覚的にも落ち着きをもたらします。鉄釉の黒と茶の中間的な発色は、焼成の加減によって自然に現れるものであり、その不確かさの中に「一期一会」の精神を見出すことができます。表面に現れたごく細やかな轆轤目の痕跡もまた、機械的な均質とは異なる、“人の手”による呼吸を感じさせ、茶の湯の道具としての本懐を十二分に果たす造形美となっています。


茶の湯の中で生きる器

水指は、茶の湯において「清め」の象徴です。点前の間、常に客の正面に位置し、その姿が空間全体の印象を左右します。本作に見られる抑制された佇まいと豊かな釉景は、まさにその役割にふさわしい品格を備えており、目にする者に“澄んだ気”を届ける力を秘めています。

とくに注目すべきは、蓋の縁にかけて柔らかく溶け出す翠釉の扱いです。六代文齋様が長年にわたり探究してきたこの色彩は、ただ美しさを演出するためだけではなく、彼の精神性――すなわち「平和を願い、命の循環を感じる」視点から生まれた色です。その翠が黒褐色の鉄釉と溶け合う様子は、まさに“陰と陽”“剛と柔”の共演といえるでしょう。


文齋窯の系譜と革新

この器に込められた造形美と思想性は、150年以上の歴史を持つ文齋窯の伝統を礎としています。

初代・小川文齋(文助)は1809年に加賀に生まれ、陶業の道を志して九州や肥前有田などを巡り、築窯の技術を習得。その後、京都・鹿背山にて窯を開き、一条家に認められ「齋」の字と家紋を賜ったことから、“文齋”の名がはじまりました。1873年には京都五条坂に窯を移し、以降六代にわたってその技術と精神を継承してきました。

六代 小川文齋(興)様は、大学院で彫刻を学んだのち陶芸の道に入り、日展や京展で数々の受賞を重ね、現代的な感性と伝統技法とを融合させた作品群で注目を集めています。近年では「緑色の人」として知られ、翠釉の表現を軸に平和への祈りを形にする創作活動を展開しています。


平和と美の“器”

六代文齋様が語るように、「争いのない世界への願いを、器というかたちに込めたい」。
本作のような静謐な水指においてこそ、その想いはひときわ明確に表れています。黒の中に広がる光、釉薬の流れが作る偶然の風景。これらは決して作為では得られず、炎と土と水、そして人の手と心がひとつに結ばれて生まれる“焼き物の奇跡”です。

そしてその奇跡を受け止めるのが、茶の湯の場――つまり、人と人とが向き合い、心を交わす空間です。そこにこの水指があることで、空気が静まり、時間がゆるやかに流れ始める。まさに、用の器でありながら精神性を深く内包した“象徴”といえるでしょう。


鉄釉水指――それは、静けさの中に宿る強さ、
そして翠の一滴に込められた平和への願いを湛える、文齋窯の結晶。
今この時代にこそ求められる、美と祈りの形。

 

六代 小川 文齋(興) 文齋窯 六代目 当主
陶芸作家・日展 会友・京都工芸美術作家協会 会員

活動経験
・カルチャーセンター講師(毎日・NHK・京都)20年継続中
・野焼き (五代文齋と共に)
・有限責任事業組合工人を結成・参加

陶歴
1974 京都五条坂の陶芸家 五代 小川文齋の長男として生まれる。
1999 京都造形芸術大学大学院 芸術学部 彫刻コース 修了
2000 京都府陶工高等技術専門校 成形科 修了 / 京展 入選 / 全関西美術展 入選
2001 京都府陶工高等技術専門校 専攻科 修了 / 京展 入選 / 京都工芸美術作家協会 入会
2002 グループ展「5人展」 / 京都市工業試験場 窯業研究室 修了 / 京展 楠部賞 / 第34回日展 初入選
2003 京展 入選 / 第25回日本新工芸展 日本新工芸奨励賞 / 日本新工芸家連盟近畿会 入会 / 全関西美術展 入選 / 第35回日展 入選
2004 京展 入選 / 第26回日本新工芸展 入選 / 日本新工芸展近畿展 読売新聞大阪本社賞 / 第36回日展 入選
2005 第27回日本新工芸展 東京都知事賞 / 初個展 (京都大丸百貨店アートサロン) / 第37回日展 入選
2006 第28回日本新工芸展 入選 / 日本新工芸展近畿展 読売テレビ放送賞 / 全関西美術展 入選 / 個展(髙島屋京都店 美術工芸サロン) / 第38回日展 入選
2007 京展 入選 / 第29回日本新工芸展 入選 / 第39回日展 入選 / 京都女子大学附属小学校 創立50周年記念 陶芸展 出品
2008 京展 入選 / 第30回日本新工芸展 入選 / U.S.E Uryuyama.Sculptors.Exhibition (ギャラリーマロニエ)
2009 グループ展「真朱展 冬の集い」 / 日本新工芸家連盟 会員になる / 第31回日本新工芸展 出品 / 京都工芸美術作家協会展 協会奨励賞 / 日本新工芸展近畿展 読売新聞大阪本社賞 / 第41回日展 入選 / 個展 (京都大丸百貨店 アートサロン) / U.S.E展 2009 (ギャラリーマロニエ)
2010 第32回日本新工芸展 出品 / 第42回日展 入選
2011 京都女子学園 創立100周年記念 第8回特別展「附属小学校卒業生-陶芸作家展」出品 / 第33回日本新工芸展 出品 / 全関西美術展 読売テレビ賞 受賞 / 新天地を求めた京焼 清水焼団地五十年の歩み 出展 / U.S.E 4 (ギャラリーマロニエ) / 創立65周年記念 京都工芸美術作家協会展 出品 / 個展 (京都大丸百貨店 美術画廊)
2012 第34回日本新工芸展 審査員 / 日本新工芸展近畿展 京都市教育長賞 / U.S.E 5 (ギャラリーマロニエ)
2013 京焼 文齋窯 六代目を継承する。
第35回日本新工芸展 出品 / U.S.E 6 (ギャラリーマロニエ) / 第44回日展 入選
2014 U.S.E 7 (ギャラリーマロニエ) /日本新工芸家連盟 脱退
2015 琳派400年記念現代作家200人による日本画・工芸展(京都文化博物館)/ 平成の京町家×平成の工人 / U.S.E 8 (ギャラリーマロニエ)
2016 京都六原地区「みんなでつけよう ろじのあいしょう」プロジェクト銘板作成 / 陶芸に集う日本画・写真・截金 四人のコラボ展(ポルタギャラリー華)
2017 個展 大丸京都店 美術画廊 / U.S.E 10 (ギャラリーマロニエ)
2018 喫茶去~まずはお茶を一服~ 工人(ポルタギャラリー華)
登り窯 損壊
2019 登り窯修復 完了
京展 小さな宇宙展(ポルタギャラリー華)
六代 小川文齋襲名披露祝賀会
2020 京展 小さな宇宙展(ポルタギャラリー華)/ 京都工芸美術作家協会 選抜展
2021 創立75周年 京都工芸美術作家協会展 / 個展 大丸京都店 美術画廊

ぜひ茶室にて、その気配と存在感をお確かめください。

小川文齋様との対談 – 陶器の専門店【甘木道】

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