商品情報にスキップ
1 8

翠緑一輪生 小川文齋

翠緑一輪生 小川文齋

通常価格 $628.00
通常価格 セール価格 $628.00
セール 売り切れ
税込。 配送料はチェックアウト時に計算されます。

幅 : 8.0cm×8.0cm 高さ : 20.0cm

滴り落ちる翠 ― 翠緑一輪生 六代 小川文齋(興) 作

この「翠緑一輪生(すいりょくいちりんざし)」は、六代 小川文齋(興)様による、凛とした佇まいと豊かな色彩感覚が融合した作品です。筒状にすっと伸びた首と、ふっくらと膨らむ胴の造形は、まるで一輪の草花を迎えるために静かに息をひそめているような、慎ましくも力強い存在感を放ちます。

本作の見所は、首部から胴部へと流れ落ちる釉薬の動きです。文齋様の代名詞とも言える翠緑釉が、まるで山の雨垂れのようにしたたり、黒釉の胴部へと溶け込んでいく様子は、見る者に自然の摂理そのものを想起させます。緑がもたらす安心感、そして黒が秘める深遠な静けさ。その二つがこの器の中で見事に調和し、まるで“命が宿る場所”を象徴するかのような力強い世界を形成しています。

この一輪生に一輪の草花を挿せば、器と自然、静と動、意図と偶然が一つに交わり、空間に気韻が生まれます。たとえば、山野に咲く一輪の露草や、枯れた枝先の椿など、ありふれた植物ですらこの器の中では主役となり、凛とした生命の輝きを放つことでしょう。


歴史と系譜の重みを背負って生まれた造形美

この「翠緑一輪生」に込められた美意識と造形哲学は、文齋窯の長い歴史と深く結びついています。小川家がその始まりを告げたのは、江戸後期、1847年のこと。初代・小川文齋(文助)は九州で築窯技術を学び、京都府木津川市の鹿背山にて窯を開いた人物です。一条家に認められ、「齋」の字と家紋を賜ったことにより、“文齋”の名を戴いての創業となりました。

1873年には明治維新の混乱を乗り越え、京都へと拠点を移し、五条坂の地に窯を開きます。以来、六代にわたり陶磁器制作を連綿と続けてきた文齋窯の歩みは、日本陶芸史においても貴重な系譜といえるでしょう。初代の技と心を受け継ぎながら、時代ごとに美意識を更新し、京焼の新たな地平を拓いてきたこの窯の歴史は、本作の奥に静かに息づいています。


緑に込めた、平和への願い

六代目・小川文齋(興)様は、代々受け継がれてきた文齋の名とともに、その本質を問い直し、現代の文脈で“美”の再定義に挑んでいます。大学院で彫刻を学び、京都の陶工高等技術専門校や工業試験場で陶芸を徹底的に学んだ後、父・五代文齋のもとで作陶を始めました。2014年、正式に六代を襲名してからは、より一層“文齋らしさ”と“自分らしさ”の間で、表現の幅を深めています。

文齋様がとりわけ注力してきたのが、「緑色の探究」です。父が赤を多く使っていたのに対し、自身はあえて“緑”に魅せられ、そこに自分の精神性を託しています。緑は山の木々のように人を包み込み、安らぎを与える色。そして何より、「平和」の象徴でもあります。

その精神はこの「翠緑一輪生」にも確かに宿っています。翠釉の流れは、単なる技術や装飾ではなく、命の循環・人のつながり・自然との共生を象徴する、彼にとっての“祈り”なのです。黒釉の胴に滴り落ちる翠は、まるで現代の荒々しさを癒す清涼の雫。見る者の心にそっと寄り添い、言葉にならない感情をすくい取ってくれるような力を備えています。


花と器のあわいに生まれる詩情

一輪生とは、花を迎え入れるための器であると同時に、「間(ま)」を感じさせる造形でもあります。本作の凛とした立ち姿は、花を挿す前からすでに“完成された空間”を生み出しており、挿された花によってその世界がさらに多重的に広がっていくのです。無理に豪華な花を挿す必要はありません。野に咲く一輪の草花、あるいは枯れた枝さえも、この器のなかでは詩情を帯びて立ち上がるのです。

また、本作のフォルムは機能性にも優れています。胴部の安定感と首部の長さは、花の水持ちを良くし、活ける者の手に自然と馴染む設計になっています。その使いやすさは、単なる鑑賞陶ではなく“用の美”を重んじる京焼の真髄を体現している証でもあります。


美は世界共通の祈り ― 未来へとつなぐ“翠の系譜”

六代 小川文齋様の作品に一貫して流れるのは、「美しいものは、世界をつなぐ共通語である」という確信です。父が遺した赤の情熱を継がず、あえて緑にこだわったのも、争いを遠ざけ、人々が手を取り合う“輪”を願ったからこそ。そして今、彼が制作する一つひとつの器には、「芸術は平和の架け橋になり得る」という強いメッセージが込められています。

翠緑の釉は、見る者の心を解きほぐし、花の命を一層際立たせる。
それは“色彩”というよりも、“思想”であり、“祈り”なのです。


文齋窯――技と精神が受け継がれる場

文齋家は、1809年に加賀国に生まれた初代・文助から始まり、各地の陶業地を巡り、肥前有田にて築窯法を修めた後、京都の鹿背山にて窯を開いた伝統ある陶家です。江戸から明治、そして昭和・平成・令和へと、六代にわたり一度も火を絶やすことなく陶を焼き続けてきました。

戦争によって四代の後継を失った苦難を乗り越え、五代・欣二によって復興され、現在の六代・興によってその技と精神はさらに深化しています。国の登録有形文化財に指定された登り窯を守り、伝統を背景にしながらも、現代的な感性と表現力で新たな“用の美”を切り拓く姿勢には、創業以来の「革新と継承」の理念が今なお力強く息づいています。

ご購入に際してのご案内
本作品は、ご成約後「紙箱」でのご用意となります。
木箱は付属いたしません ので、あらかじめご理解のほどお願い申し上げます。
本作品は作家様より木箱のご用意がない仕様であり、当店でも木箱のお仕立てを行っておりません。そのため専用の紙箱にてお渡しさせていただいております。

 

六代 小川 文齋(興) 文齋窯 六代目 当主
陶芸作家・日展 会友・京都工芸美術作家協会 会員

活動経験
・カルチャーセンター講師(毎日・NHK・京都)20年継続中
・野焼き (五代文齋と共に)
・有限責任事業組合工人を結成・参加

陶歴
1974 京都五条坂の陶芸家 五代 小川文齋の長男として生まれる。
1999 京都造形芸術大学大学院 芸術学部 彫刻コース 修了
2000 京都府陶工高等技術専門校 成形科 修了 / 京展 入選 / 全関西美術展 入選
2001 京都府陶工高等技術専門校 専攻科 修了 / 京展 入選 / 京都工芸美術作家協会 入会
2002 グループ展「5人展」 / 京都市工業試験場 窯業研究室 修了 / 京展 楠部賞 / 第34回日展 初入選
2003 京展 入選 / 第25回日本新工芸展 日本新工芸奨励賞 / 日本新工芸家連盟近畿会 入会 / 全関西美術展 入選 / 第35回日展 入選
2004 京展 入選 / 第26回日本新工芸展 入選 / 日本新工芸展近畿展 読売新聞大阪本社賞 / 第36回日展 入選
2005 第27回日本新工芸展 東京都知事賞 / 初個展 (京都大丸百貨店アートサロン) / 第37回日展 入選
2006 第28回日本新工芸展 入選 / 日本新工芸展近畿展 読売テレビ放送賞 / 全関西美術展 入選 / 個展(髙島屋京都店 美術工芸サロン) / 第38回日展 入選
2007 京展 入選 / 第29回日本新工芸展 入選 / 第39回日展 入選 / 京都女子大学附属小学校 創立50周年記念 陶芸展 出品
2008 京展 入選 / 第30回日本新工芸展 入選 / U.S.E Uryuyama.Sculptors.Exhibition (ギャラリーマロニエ)
2009 グループ展「真朱展 冬の集い」 / 日本新工芸家連盟 会員になる / 第31回日本新工芸展 出品 / 京都工芸美術作家協会展 協会奨励賞 / 日本新工芸展近畿展 読売新聞大阪本社賞 / 第41回日展 入選 / 個展 (京都大丸百貨店 アートサロン) / U.S.E展 2009 (ギャラリーマロニエ)
2010 第32回日本新工芸展 出品 / 第42回日展 入選
2011 京都女子学園 創立100周年記念 第8回特別展「附属小学校卒業生-陶芸作家展」出品 / 第33回日本新工芸展 出品 / 全関西美術展 読売テレビ賞 受賞 / 新天地を求めた京焼 清水焼団地五十年の歩み 出展 / U.S.E 4 (ギャラリーマロニエ) / 創立65周年記念 京都工芸美術作家協会展 出品 / 個展 (京都大丸百貨店 美術画廊)
2012 第34回日本新工芸展 審査員 / 日本新工芸展近畿展 京都市教育長賞 / U.S.E 5 (ギャラリーマロニエ)
2013 京焼 文齋窯 六代目を継承する。
第35回日本新工芸展 出品 / U.S.E 6 (ギャラリーマロニエ) / 第44回日展 入選
2014 U.S.E 7 (ギャラリーマロニエ) /日本新工芸家連盟 脱退
2015 琳派400年記念現代作家200人による日本画・工芸展(京都文化博物館)/ 平成の京町家×平成の工人 / U.S.E 8 (ギャラリーマロニエ)
2016 京都六原地区「みんなでつけよう ろじのあいしょう」プロジェクト銘板作成 / 陶芸に集う日本画・写真・截金 四人のコラボ展(ポルタギャラリー華)
2017 個展 大丸京都店 美術画廊 / U.S.E 10 (ギャラリーマロニエ)
2018 喫茶去~まずはお茶を一服~ 工人(ポルタギャラリー華)
登り窯 損壊
2019 登り窯修復 完了
京展 小さな宇宙展(ポルタギャラリー華)
六代 小川文齋襲名披露祝賀会
2020 京展 小さな宇宙展(ポルタギャラリー華)/ 京都工芸美術作家協会 選抜展
2021 創立75周年 京都工芸美術作家協会展 / 個展 大丸京都店 美術画廊
詳細を表示する
  • 【丁寧に、お送りいたします】

    それぞれの商品に合った形態で、丁寧に梱包いたします。

    また、作品(器など)により、納期は変わります。

    作品の引渡時期は、ご注文確認後、共箱準備済み作品は7営業日以内に出荷させていただきます。共箱を新たに製作する作品は45営業日以内に出荷させていただきます。

    いずれも、ご注文を確認いたしましたら、当店より納期をメールにてご連絡いたします。

    梱包のこだわりについて

  • 【陶器をご購入の際のお願い】

    作品ごとに、出来るだけ詳細をご確認いただけるように画像を掲載しておりますが、ご不明な点はお問い合わせください。

    作品の色合いなどは、画像を表示する環境により若干異なることがございますが、ご理解の程お願いいたします。

    作品により貫入などによる、茶碗への染み込みが発生することがございますが、それも経年変化の味わいとしてご理解いただきますようお願いいたします。

    作品の取り扱いについて