Skip to product information
1 of 8

練込青瓷捻貫曙茶盌 諏訪蘇山

練込青瓷捻貫曙茶盌 諏訪蘇山

Regular price ¥308,000
Regular price Sale price ¥308,000
Sale Sold out
Taxes included. Shipping calculated at checkout.

幅 : 13.0cm 高さ : 7.3cm

Ⅰ.作品概要

本作「練込青瓷捻貫曙茶盌」は、『枕草子』冒頭の名句「春はあけぼの」に着想を得て、白磁・青磁・藍磁・紅磁・黄磁の五色磁土を幾層にも重ね、轆轤で一気に挽き上げたのち、胴がまだ柔らかなうちに螺旋状に捻り上げる“捻貫(ねじぬき)”技法を施した抹茶碗です。練込層が水平に描くグラデーションを、捻貫による立体的なうねりが優しく揺らし、夜の群青から桃色、そして仄かな黄金色へと移ろう「あけぼの」の色彩と空気感を器肌に映し出しています。磁土による捻貫は可塑性の高い陶土に比べて難度が格段に高く、五色の層を壊さずに螺旋を描かせる高度な指圧と水分管理が求められます。


Ⅱ.造形とフォルム

捻貫胴の律動

胴外面を三段に締めながら時計回りに捻り、波状稜線を形成しています。五色のストライプが斜めに流れることで、夜明けの雲が風にほどける景を立体的に表現しています。

端反りの口縁

口縁はごく僅かに外反し、茶筅捌きを妨げません。縁に走る淡藍のラインが夜明け直前の残光を暗示し、口縁の釉溜まりが翡翠色を濃く映えさせています。

浅めの見込みと軽やかな高台

見込みは浅広がりで、螺旋層が底へ向かい静かに収束します。抹茶が注がれると、緑の液面が曙光に染まる雲海のように映えます。高台は低めに削り出し、外へ緩やかに広がる形状で掌への収まりと軽快さを両立させています。高台脇に覗く黄磁層が差し始める陽光を暗示しています。


Ⅲ.練込×捻貫技法と釉調――「あけぼの」を抱く層と螺旋

五色磁土の層構成
白磁・青磁・藍磁・紅磁・黄磁を板状に延ばし、幾十にも重ねて円筒に巻き、芯土として轆轤成形。回転に伴い層が水平ストライプを描き、さらに捻貫で斜めに歪むことで、雲の帯が風にたなびくような動きが生まれます。同じ景色を持つ茶盌は二つと存在しません。

透明青磁釉のヴェール
成形後、透明度の高い青磁釉を全面に掛け、還元焼成。釉層がガラス質の膜となり、内部の層模様を柔らかく包み込みながら奥行きを与えます。藍磁層が夜の残光を、紅磁層が曙の薔薇色を、黄磁層が差し始める朝陽を示唆し、白磁層がすべてを霞のように溶かし込んでいます。

釉肌の触感
釉面は滑らかで、指先にしっとりと吸い付くような感触があります。視覚の渦と層を味わいながら、肌理の静けさが手のひらを通じて心を落ち着かせます。


Ⅳ.茶席での取り合わせと機能美

季節 推奨主菓子 茶盌との相乗効果
早春 桜薯蕷・梅花羹 紅磁層が花霞を思わせ、淡紅の菓子を優しく映えさせます
水牡丹・葛饅頭 青磁・藍磁層が涼感を強調し、透明菓子の清涼を引き立てます
月見団子・菊慈童 黄磁層が名月の光を暗示し、秋夜の情趣を深めます
柚子餅・雪平 白磁層が雪景色を連想させ、抹茶の緑が生命の兆しを際立てます

抹茶との調和
抹茶の鮮やかな緑が螺旋層に浮かび上がり、茶碗内部に“春の胎動”が宿るかのような視覚効果をもたらします。

照明効果
行灯や蝋燭の暖色光を当てると、紅磁・黄磁層がほのかに輝き、藍磁層が夜明け前の静寂を深めます。夜席では特に幽玄な景色が際立ちます。


Ⅴ.文学的背景と技法的意義

『枕草子』と「あけぼの」

清少納言が描いた「あけぼの」は、闇と光が交錯する一瞬の色彩の饗宴です。四代 諏訪蘇山様 はその言葉を五色の磁土と螺旋の動きに置き換え、文学と陶芸を横断する新たな青磁表現を試みています。

捻貫の稀少性

捻貫は本来陶土向きの技法で、磁土では割れや歪みが生じやすく成功例が極めて少ないとされます。本作は練込層を壊さず均一に捻る高度な湿度管理と指圧制御により、層と螺旋を両立させています。

黄磁層の挑戦

黄磁は還元焼成で失色しやすい難物ですが、カオリンに微量の鉄・チタンを添加し淡いレモンイエローを確保。藍磁層との補色関係が「あけぼの」の光彩を際立たせています。


Ⅵ.作家略歴と制作姿勢

四代 諏訪蘇山様(1970年京都市生まれ)は、三代 諏訪蘇山様 と塗師・十二代 中村宗哲様 の薫陶を受け、2002年に四代を襲名。青磁研究を基盤に、蛍手・飛青瓷・練込青磁など多彩な技法を駆使し、「作品には物語を宿し、使い手の心と重なって完成する」という理念を掲げておられます。本茶盌では「夜と朝の狭間に芽生える希望」を捻貫の螺旋に託し、点前のひとときに春の息吹を届けたいとの思いが込められています。


Ⅶ.結語

「練込青瓷捻貫曙茶盌」は、翡翠色の静謐な青磁に藍の残夜と紅の薄明、黄の朝光を抱き込み、さらに捻貫の螺旋で夜明けの雲の動きを立体化した逸品です。抹茶を注げば緑の光が曙の空を染め上げ、茶席に文学的情緒と季節の移ろいを呼び込みます。四代 諏訪蘇山様 の卓越した技術と詩的感性が結晶した本作は、豪華さではなく品位と躍動で場を包み込み、見る者の心に穏やかな希望と新生の息吹をもたらしてくれることでしょう。

 

四代諏訪蘇山 略歴

1970年 京都市に生まれる 父 三代 諏訪蘇山・母 十二代 中村宗哲 三女
1988年 京都市立銅駝美術工芸高等学校漆芸科卒業
1992年 成安女子短期大学造形芸術科グラフィックデザインコース映像専攻卒業・専攻科修了
1996年 京都府立陶工高等技術専門校成形科・研究科修了
1997年 京都市伝統産業技術者研修陶磁器コース本科修了 父と共に陶磁器の制作活動 各地にて中村宗哲展に出品、哲公房に参加
2002年 四代諏訪蘇山を襲名
現在 各地にて諏訪蘇山展を開催
View full details
  • [I will send it to you quickly and carefully]

    We carefully package each product in a way that suits it best.

    Also, delivery times vary depending on the piece (vessel, etc.).

    Items that already come with a box will be shipped within 1-3 days of the order date.

    For items that require a box to be made after your order, it will take approximately 30 days for production to be completed and then shipped.

    In either case, once we have confirmed your order, we will contact you by email to inform you of the delivery date.

  • [Requests when purchasing pottery]

    Even products that look the same may differ slightly in color, shape, size, etc.
    The way the glaze is used, the power of the kiln, the firing method, the season, and the humidity also affect the appearance of the pottery.
    Please understand the individuality of each piece of pottery and enjoy the unique warmth of handmade.