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黒ぐい呑 柳下季器

黒ぐい呑 柳下季器

Regular price ¥24,200
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幅6.0cm   高さ6.6cm

柳下季器(やなした ひでき)様による《黒ぐい呑》は、同氏の代表作である《黒茶盌》の造形的精神と美意識を、手のひらにおさまるぐい呑というかたちで凝縮した作品です。まるで漆黒の静寂そのものを小さな器に閉じ込めたかのようなこの作品には、茶の湯に通じる哲学と、現代の生活に寄り添う造形美が見事に融合しています。


小さき器に宿る、黒の宇宙

「黒」という色がもつ深淵性と神秘性を、柳下様は単なる色彩の選択ではなく、“景色”として表現しています。本作の黒は、ただの漆黒ではありません。光の加減によって、わずかに茶や墨のようなニュアンスが浮かび上がり、夜空や深海のような広がりを感じさせてくれます。まるで宇宙の奥底を覗き込むかのような静謐な景色が、小さな器の中に立ち現れるのです。こうした黒の表現は、光悦や長次郎といった古典の系譜にありながら、柳下様独自の焼成と釉調によって生まれた“今”の黒。その視覚的な奥行きは、酒を注いだとき、また飲み干したときに初めて見える「底景」として、見る者の心をそっと掴みます。


面取りが生む、静かなる緊張感

このぐい呑の造形には、《黒茶盌》でも用いられている面取りの技法が生かされています。ぐい呑という限られたサイズの中で、ほんのわずかな角度の変化が表情を大きく左右します。シャープに立ち上がる稜線は、黒釉の艶やかさと相まって、器全体に緊張感とリズムを与えています。また、飲み口はすぱっと切り落とされたかのような鋭さをもって成形されており、その口当たりの繊細さには柳下様の高度な轆轤技術が感じられます。見る者、使う者の身体感覚と密接に関わりながら、静かに存在を主張する器——それが《黒ぐい呑》です。


実用のなかに宿る、造形美

ぐい呑という器種において重要なのは、視覚の美しさと手取り・口当たりといった身体的な使いやすさの両立です。この《黒ぐい呑》では、高台がしっかりと丁寧に作り込まれており、手に持ったときの安定感が際立っています。底面から見上げたときの佇まいにも破綻がなく、まるで彫刻のように隅々まで意識の行き届いた構造です。また、釉薬のかかり具合にも微妙な濃淡があり、ときに釉の隙間から素地の茶がかすかにのぞきます。これが器に侘びた風情を与え、無作為に見えて計算された美のバランスを感じさせてくれます。


「黒茶盌」から「黒ぐい呑」へ──精神の継承と展開

本作は、柳下様の《黒茶盌》がもつ精神性と造形美を、酒器という生活の中の道具に落とし込んだ「縮景」とも言える存在です。
《黒茶盌》が放つ空間を変えるほどの格調と気配を、そのまま手の中に宿すような感覚。わずかに小さくなった分だけ、使い手にぐっと寄り添い、日々の時間に静かな輝きを添えてくれるのです。このような表現のあり方は、ただ古典に倣うのではなく、古典の精神を土台にして、現代の暮らしと向き合いながら器を生み出す柳下様の制作姿勢を象徴しています。そこには「伝統と革新」の真の意味が、静かに宿っているといえるでしょう。


日常の中の非日常を手にするために

《黒ぐい呑》は、飾っても美しく、使ってなお心に残る作品です。食卓や酒席のひとときに、ふと静けさをもたらしてくれるその佇まいは、ただの器ではありません。それは、使う人にそっと語りかけ、手のひらの中にある時間をほんの少し特別なものへと変えてくれる、小さな芸術品です。酒を注ぎ、口に運び、空になった器の底に見える“景色”——そこにあるのは、茶の湯にも通じる、一期一会の美意識そのものです。

 

柳下 季器(Hideki Yanashita) プロフィール
陶芸家 1967 –
東京都生まれ。現在は三重県伊賀市を拠点に活動。桃山時代のやきものに魅了され、陶芸の道へ進む。信楽での修行を経て三重県・伊賀に自ら穴窯を築窯し、「神田窯」を開窯。杉本貞光氏に薫陶を受け、侘び寂びの世界を独自の視点で深く探求しつつ、楽焼や焼締、井戸、織部など多彩な作品を制作しています。柳下氏の創作において重要なテーマとなるのは、先人の技法や精神を深く学びつつも、現代の素材や独自のアプローチを取り入れることで生まれる新たな極みへの探究です。その作品は時代に左右されない本質的な美を問いかけ、観る者をより深い芸術の世界へと誘います。

活動拠点
三重県・伊賀

略歴
1967年 東京都生まれ
1989年 専門学校桑沢デザイン研究所卒業
2002年 三重県伊賀市に穴窯を自身で築窯(神田窯)
2002年 高島屋横浜店にて二人展
2004年 高島屋横浜店にて個展(以降開催)
2007年 高島屋京都店にて個展(以降開催)
2007年 杉本貞光先生に薫陶を受ける(以降現在まで)
2008年 高島屋大阪店にて個展(以降開催)
2013年 JR名古屋タカシマヤにて個展(以降開催)
2023年 日本橋三越本店にて個展(以降開催)

 

 

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