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練込青瓷曉茶盌 諏訪蘇山

練込青瓷曉茶盌 諏訪蘇山

Regular price $1,965.00
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幅 : 12.7cm 高さ : 7.0cm

Ⅰ.作品概要

「練込青瓷曉茶盌」は、藍磁を基調に据えた磁土に白磁・紅磁を差し込み、轆轤で一気に挽き上げる“練込(ねりこみ)”技法によって誕生した抹茶碗です。深い群青の闇が、ほのかな薄紅をまといながら東雲へと移ろう――“曉(あかつき)”の空気を器肌に封じ込めるため、四代 諏訪蘇山様 は藍磁層を最厚に設計し、その上に白磁と紅磁を細く重ねて柔らかなグラデーションを生み出しています。静かな夜気を残す藍と、遠くの空を染め始める曙光の薄紅が、翡翠色の青磁釉に溶け合い、掌の中で夜と朝の境界がゆるやかに呼吸いたします。


Ⅱ.造形とフォルム

端反りの口縁

口縁はごく僅かに外反し、茶筅捌きを妨げず唇当たりも滑らかです。縁を走る淡い藍磁ラインが夜明け直前の深い残光を暗示し、釉溜まりの翡翠色が薄紅を引き立てています。

緩やかな胴張りと段削り

胴は二段の控えめな削りを施し、曉の空にたなびく雲の層を立体的に表現しています。削りの稜線で練込層がわずかにずれ、空気の流れを思わせるリズムが生まれています。

浅広がりの見込みと高台

見込みは浅く開き、練込模様が底へ向けて穏やかに収束。抹茶を注ぐと、緑の液面が夜明けの空に昇る初日を思わせます。高台は低めに削り出し、外へ緩やかに広がる形状で掌への収まりと軽快さを両立させています。


Ⅲ.練込技法と釉調――曉の空を抱く層の深み

磁土の層構成
最下層に藍磁、その上に青磁・白磁・紅磁を細帯状に重ね、板状に延ばした後円筒に巻き、芯土として轆轤成形。回転に伴い層が水平ストライプを描き、夜から朝へと移ろう色調が自然発生的に現れます。

透明青磁釉のヴェール
成形後は透明度の高い青磁釉を全面に掛け、1265 ℃前後で還元焼成。釉層がガラス質の膜となって内部の層模様を柔らかく包み込み、光を受けて淡い靄のような滲みを生み出します。藍磁層は夜の静寂を、紅磁層は曙の薔薇色を、白磁層が夜明けの靄を示唆し、青磁層が全体を澄み渡らせています。

釉肌の触感
釉面は微細な凹凸を残さず、指先にしっとりと吸い付くような感触があります。視覚のグラデーションとともに、肌理の静けさが手のひらを通じて心を落ち着かせます。


Ⅳ.茶席での取り合わせと機能美

季節 推奨主菓子 茶盌との相乗効果
早春 梅花羹・桜薯蕷 紅磁層が花霞を思わせ、淡紅の菓子を優しく引き立てます
若鮎・葛饅頭 青磁・藍磁層が涼感を強調し、透明菓子の清涼を映します
月見団子・栗羊羹 藍磁層が夜空を深め、紅磁層が昇る月の光を暗示します
雪平・柚子餅 白磁層が雪景色を連想させ、抹茶の緑が生命の兆しを際立てます

抹茶との調和
抹茶の鮮やかな緑が層模様に浮かび上がり、茶碗内部に“曉の息吹”が宿るかのような視覚効果をもたらします。

照明効果
行灯や蝋燭の暖色光を当てると、紅磁層がほのかに輝き、藍磁層が夜明け前の静寂を深めます。夜席では特に幽玄な景色が際立ちます。


Ⅴ.文学的背景と技法的意義

曉の情景

『枕草子』の「あけぼの」に続く“曙の紫だちたる雲”の一節を想起させる色設計です。藍から紅へのグラデーションに白の霞が重なり、古典文学の情景を器に移しています。

練込青磁の深化

初代 諏訪蘇山様 が極めた単色青磁を礎に、四代は多層化による色彩とリズムを導入。曉茶盌は、静謐さと微妙な色調変化を両立させた現代青磁の一里塚と位置づけられます。

藍磁ベースの挑戦

藍磁はコバルト系顔料を用いるため、青磁釉とのバランスを誤ると発色が濁りやすい難点があります。本作では藍磁層を最厚にしながらも、還元炎と酸化炎の切り替えタイミングを秒単位で調整し、透明感を損なわない深い藍を実現しています。

 


Ⅵ.作家略歴と制作姿勢

四代 諏訪蘇山様(1970年京都市生まれ)は、三代 諏訪蘇山様 と塗師・十二代 中村宗哲様 の薫陶を受け、2002年に四代を襲名。青磁研究を基盤に、蛍手・飛青瓷・練込青磁など多彩な技法を駆使し、「作品には物語を宿し、使い手の心と重なって完成する」という理念を掲げておられます。本茶盌では「夜と朝の狭間に漂う静かな希望」を練込層に託し、点前のひとときに曉の息吹を届けたいとの思いが込められています。


Ⅶ.結語

 「練込青瓷曉茶盌」は、深藍の静寂に薄紅の曙光を抱き込み、翡翠色の青磁釉で包み込んだ逸品です。抹茶を注げば緑の光が夜明けの空を染め上げ、茶席に文学的情緒と季節の移ろいを呼び込みます。四代 諏訪蘇山様 の卓越した技術と詩的感性が結晶した本作は、豪華さではなく品位と静けさで場を包み込み、見る者の心に穏やかな希望と新生の兆しをもたらしてくれることでしょう。

 

四代諏訪蘇山 略歴

1970年 京都市に生まれる 父 三代 諏訪蘇山・母 十二代 中村宗哲 三女
1988年 京都市立銅駝美術工芸高等学校漆芸科卒業
1992年 成安女子短期大学造形芸術科グラフィックデザインコース映像専攻卒業・専攻科修了
1996年 京都府立陶工高等技術専門校成形科・研究科修了
1997年 京都市伝統産業技術者研修陶磁器コース本科修了 父と共に陶磁器の制作活動 各地にて中村宗哲展に出品、哲公房に参加
2002年 四代諏訪蘇山を襲名
現在 各地にて諏訪蘇山展を開催
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