商品情報にスキップ
1 8

鉄釉木目茶碗 尾西楽斎

鉄釉木目茶碗 尾西楽斎

通常価格 $1,578.00
通常価格 セール価格 $1,578.00
セール 売り切れ
税込。 配送料はチェックアウト時に計算されます。

幅 : 12.7cm 高さ : 8.1cm

尾西楽斎様による本作は、深く焼き締まった鉄釉と、樹木の年輪を思わせる木目文様が溶け合うことで、土と炎が織り成す原初の景色を茶席へ呼び込む一碗です。荒々しさと静謐さの両面をたたえる肌理(きめ)は、侘びの精神を現代的に昇華した作品といえるでしょう。以下、五つの観点からその魅力を詳説いたします。


1.造形美 ― 静かなうねりを秘めた端正な姿

わずかに楕円を帯びた口縁と、腰の高い丸胴は、手捻り成形特有のやわらかな揺らぎを保ちながらも、見込みへ向かって穏やかにすぼまります。高台は小さく切り揃えられ、全体の重心を低く構えることで、手取りに安定感と静かな緊張を与えています。茶筅を含んだときの水切れが良く、点前の所作にも自然に寄り添うバランスです。

2.釉調・質感 ― 鉄釉と木目の相乗

鉄釉の深み
外側を覆う鉄釉は、赤黒から墨黒へと移ろう多層的な発色を示し、窯変による微細な光沢が夜の星屑のように瞬きます。酸化鉄の含有量が高く、高火度域で還元気味に焚かれたことにより、金属質の重厚な色調が得られました。

木目文様の生成
素地に縄を巻き取って転写する「縄目(なわめ)」ではなく、あえて削ぎやヘラ跡を重ね、さらに還元焼成で鉄分が濃淡を描くことで木目を象り(もくがたど)っています。自然木の年輪が浮かび上がるさまは、炎が“土の中の木”を再生させたかのような趣をもたらします。

対照的な内面
内側には乳白掛け分け釉が施され、淡い灰白色の鏡面が抹茶の緑を清らかに引き立てます。粗野な外肌と、瑞々しい内側――この対比が、茶の湯が求める「陰と陽」の美を可視化しています。

3.技法 ― 鉄質土の活かし方と焼成の妙

尾西楽斎様は、鉄分を多く含む荒土を選び、素地を強く締めるためロクロではなく“叩き成形”を採用。成形後は乾燥段階で表面を半乾きのうちに撫で削りし、細かな凹凸を残すことで釉薬が部分的に溜まりやすい地形を作り出しています。
焼成は還元と酸化を段階的に切り替え、火前(ひまえ)へ寄せた配置で炎の走りを強調。焼き締まった面の鉄分が溶出・酸化し、焦げや銀化のニュアンスをまとうことで、木目がより立体的に際立つ結果となっています。

4.茶席での機能美

抹茶映え
見込みの淡白釉が抹茶表面の泡立ちを整えつつ、緑を淡雪のように映し込みます。外側の深い鉄色は手の熱を穏やかに伝えるため、冬場の温茶にも適しています。

触覚の愉悦
木目状の稜線は指先に微妙な抵抗を与え、手に残るざらつきが土の風合いをダイレクトに伝えます。客は茶を呑み干したのち、器を撫でることで“土と炎の記憶”を追体験できるでしょう。

5.美意識と歴史的背景

桃山期の黒楽や伊賀・信楽の土風景を参考にしつつも、本作が独自なのは「木目」を主題に据えた点です。木目は禅における“無作為の自然”を象徴し、千利休以来の侘び茶が追究した「自然物の相」に通じます。尾西楽斎様は、あえて装飾的要素を最小限に抑え、土そのものが描く文様を前景化させることで、現代における侘びを再定義しています。

鉄釉の深い重奏と木目文様のうねりは、樹木が数百年かけて刻む時間を、一碗の中に封じ込めたかのようです。手にすれば、外面の荒々しさと内面の静けさが呼応し、飲む人自身の呼吸や鼓動と共鳴いたします。
茶席において本作を用いれば、土・木・火・水・風という五大のエレメントが一瞬で整い、客は自然と“今ここ”に意識を澄ませることでしょう。尾西楽斎様の鉄釉木目茶碗は、茶の湯が求める本質――「ひと碗に宇宙を観る」――を静かに体現した逸品であるといえます。

詳細を表示する
  • 【丁寧に、お送りいたします】

    それぞれの商品に合った形態で、丁寧に梱包いたします。

    また、作品(器など)により、納期は変わります。

    作品の引渡時期は、ご注文確認後、共箱準備済み作品は7営業日以内に出荷させていただきます。共箱を新たに製作する作品は45営業日以内に出荷させていただきます。

    いずれも、ご注文を確認いたしましたら、当店より納期をメールにてご連絡いたします。

    梱包のこだわりについて

  • 【陶器をご購入の際のお願い】

    作品ごとに、出来るだけ詳細をご確認いただけるように画像を掲載しておりますが、ご不明な点はお問い合わせください。

    作品の色合いなどは、画像を表示する環境により若干異なることがございますが、ご理解の程お願いいたします。

    作品により貫入などによる、茶碗への染み込みが発生することがございますが、それも経年変化の味わいとしてご理解いただきますようお願いいたします。

    作品の取り扱いについて