辰砂茶盌3 藤平伸
辰砂茶盌3 藤平伸
幅12cm ×12cm 高さ7.5cm
包み込むようなフォルムと穏やかな存在感
藤平伸様の「辰砂茶盌」は、その柔らかな曲線を描くフォルムが、包容力と温かみを感じさせます。この造形は、自然と両手で包み込んでしまいたくなるような感覚をもたらし、手に取る者の心を穏やかに癒します。茶盌全体から放たれる静謐な雰囲気は、日常の喧騒を忘れさせる一瞬の安らぎを与えてくれます。
辰砂釉が生む神秘と深み
辰砂釉の鮮やかで奥深い赤色は、光によって微妙な変化を見せることで独特の神秘性を醸し出しています。透き通るような色彩の層が生み出す微妙な表情に、思わず目を奪われることでしょう。この深みのある赤は、単なる器を超えた芸術作品としての品格を感じさせます。それはまさに、藤平氏の詩情豊かな感性が形となったものです。
轆轤と手びねりの絶妙な融合
藤平様は通常、轆轤をあまり使用しないことで知られていますが、この茶盌では轆轤を用いながらも独自の工夫を加えています。胴体部分を轆轤で成形した後、高台は手びねりによって仕上げるという手法を取り入れることで、轆轤の持つ均整の美しさと手びねりの温かみを見事に融合させました。「轆轤は機械的な固さを出す一方で、手びねりでは軽やかな歯切れの良さが表現しにくい。両者の長所を組み合わせることで理想的な形を生み出した」という藤平氏の言葉が、この作品に息づいています。
茶陶への挑戦と創作の自由
1993年の京都・茶道資料館で開催された個展「藤平伸 ―茶陶に遊ぶ」は、藤平氏が茶陶に本格的に取り組むきっかけとなりました。この展覧会は、茶陶の伝統に捉われず、「好きなようにやってみよう」という自由な発想から生まれた作品群を特徴としています。「辰砂茶盌」にも、彼の独特な遊び心と実験精神が色濃く反映されています。この自由闊達な創作姿勢が、茶道具としての枠を超えた新しい価値を作品に与えています。
陶の詩人・藤平伸の美学
藤平伸様は、京都・五条坂の製陶家に生まれ、清水六兵衛に師事する中で、器物のみならず詩情あふれる陶彫作品も手がけてきました。その作風には、漢代や唐代の明器から着想を得た彫刻的な要素や、軽妙な装飾性が随所に見られます。また、「遊び」を重視する姿勢が、全ての作品に躍動感と独自性を与えています。「陶の詩人」と称されるその感性は、「辰砂茶盌」にも鮮やかに息づいています。
魅了する辰砂釉茶盌の世界
「辰砂茶盌」は、深い緋色がもたらす温かさと柔らかさが使う人の心を捉えます。希少な辰砂釉を巧みに扱い、独特の質感と風格を生み出すことで、見る者に深い感動を与えます。丸みを帯びたフォルムと辰砂釉の奥深い色彩、そして轆轤と手びねりを融合させた独創的な技法が織りなすこの作品は、まさに藤平氏の美学と技術が結晶化した一品です。自由で詩情豊か、そして洒脱な創作姿勢が、この茶盌を一層際立たせています。
藤平伸様 来歴
1944 京都高等工芸学校に入学 病気のため中途退学
1945 藤平陶芸にて作陶
1957 第13回 日展にて特選・北斗賞受賞
1960 イタリア・フィレンツェ国際陶芸展
1963 第6回新日展にて菊花賞受賞 京都府文化功労賞受賞
1968 現代陶芸の新世代展 陶芸の現在-京都から展
1970 現代の陶芸ヨーロッパと日本展
1973 日本陶磁協会賞受賞
1974 中南米巡回展
1976 東独巡回日本陶磁名品展
1978 西ドイツ巡回日本陶磁名品展
1982 アメリカ・カナダ巡回展
1983 現代日本の工芸展
1985 現代日本美術の展望展
1990 京都美術文化大賞受賞
1991 京都市文化功労賞受賞
「本作品は未使用の新作です。現在、藤平伸記念館で保管されています。ご購入の際はご子息である藤平寧様が真作の証明として共箱を制作いたします」
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作品ごとに、出来るだけ詳細をご確認いただけるように画像を掲載しておりますが、ご不明な点はお問い合わせください。
作品の色合いなどは、画像を表示する環境により若干異なることがございますが、ご理解の程お願いいたします。
作品により貫入などによる、茶碗への染み込みが発生することがございますが、それも経年変化の味わいとしてご理解いただきますようお願いいたします。