皮鯨茶盌 猪飼祐一
皮鯨茶盌 猪飼祐一
幅 : 14.6cm 高さ :7.6cm
皮鯨の特徴と装飾美
「皮鯨」とは、唐津の茶碗やぐい呑みに見られる伝統的な装飾で、口縁部に黒い縁取りを施す技法です。その名は、黒い縁を鯨の皮に見立て、器本体の白や灰色の部分を鯨の腹側に例えたことに由来しています。この黒色は鉄絵具を使用しており、釉薬をかけて焼成することで、鉄分が黒く発色し、独特の美しい表情を生み出します。
猪飼祐一様の皮鯨茶盌では、線の太さや細さが器の表情に動きを与え、鉄絵の描かれ方も作品によって変化します。均一に描かれたものから、口縁を一周する中で途切れるものまで、さまざまな表情を楽しむことができます。
内側と外側の対比
この作品の特徴的な要素の一つに、内側と外側の対比があります。見込み(器の内側)には、太く力強い線で鉄絵が描かれているのに対し、外側の口縁部には細い黒線が繊細に描かれています。この繊細さが全体を引き締め、内と外で異なる雰囲気を演出しています。こうした対比が作品に深みを与え、見る角度によって異なる印象を与えることで、飽きの来ない美しさを保っています。
「変化」と「対比」の重要性
陶芸作品全般において、完璧に対称的な形や均一な色調では、奥深さに欠けることが多いです。そのため、釉薬の流し掛けや削り跡による微妙な「変化」を加えることで、器に生命が宿ります。この茶盌では、釉薬の流れや削りの技法が絶妙に組み合わさり、器に独自の表情を与えています。また、装飾の華やかさと静かさのバランスが取れており、長く使っても飽きがこない作品として完成しています。
高台の美しさと細部へのこだわり
高台の部分も、作品の美しさに欠かせない要素です。猪飼祐一様の皮鯨茶盌は、土見せの高台が特徴で、土の素朴な質感が生かされています。口縁近くの透明釉や灰釉の階層が美しく調和し、胎土の鉄分による褐色の発色が高台周りに独自の風合いをもたらしています。こうした細部へのこだわりが、作品全体のバランスを整え、釉薬の層が自然に重なり合うことで、より深い美しさを引き出しています。
まとめ
猪飼祐一様の「皮鯨茶盌」は、鉄絵の強さと繊細さ、内外の対比、そして釉薬や削り技法による微妙な変化が絶妙に調和した作品です。長く使うほどにその魅力が増し、見る者に新たな発見を与える奥深さが備わっています。このような対比や変化が、茶陶において永遠の美を生み出し、日常の中での使用をより豊かな体験にしてくれます。
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作品ごとに、出来るだけ詳細をご確認いただけるように画像を掲載しておりますが、ご不明な点はお問い合わせください。
作品の色合いなどは、画像を表示する環境により若干異なることがございますが、ご理解の程お願いいたします。
作品により貫入などによる、茶碗への染み込みが発生することがございますが、それも経年変化の味わいとしてご理解いただきますようお願いいたします。