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とんぼ香爐 小川文齋

とんぼ香爐 小川文齋

通常価格 $1,952.00
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幅 : 13.0cm×10.0cm 高さ : 19.0cm

とんぼ香爐 ― 六代 小川文齋(興)作

まるで一瞬の夏の光景がそのまま器に封じ込められたかのような、躍動感と詩情に満ちた一作――それが、六代 小川文齋様による「とんぼ香爐」です。土味豊かな胴部の素朴な風合いの中に、ひときわ鮮烈な存在感を放つのが、蓋の上に羽ばたく一匹のとんぼ。その繊細でありながら大胆な意匠は、まさに小川文齋様の近年の創作を象徴する“とんぼのモチーフ”の集大成ともいえる作品です。

とんぼとの“邂逅”から生まれた造形

もともと、五代文齋が用いていた「赤」の色調とは対照的に、六代目は「緑」の探究を己の作陶の核心とし、平和への祈りや自然との共鳴を器に託してきました。そんな中、とんぼというモチーフを本格的に取り入れる契機となったのは、まさに私的な“啓示”でした。

ある夏の日、小川文齋様が庭先で制作中、ふと目の前に現れた一匹のとんぼが指に止まり、じっと見つめてきたといいます。その瞬間、「遠慮せんと使えよ」という亡き父・五代文齋の声を感じ取ったと語っています。この出来事以降、文齋様はとんぼを積極的に作品に取り入れるようになり、本作のような遊び心と精神性を融合させた造形が生まれることとなったのです。

動と静のあいだにある造形美

本作の最大の魅力は、香爐という静かな器に、「飛ぶ」存在であるとんぼをあえて象ることによって生まれる“動と静”のコントラストにあります。しかも、そのとんぼの羽には格子文様が大胆に施され、視覚的なインパクトと共に、工芸作品としての造形力の高さを見せつけています。胴体部分はあえて素地を見せるように釉薬を控えめに留め、表面には土の粒子が感じられるような荒さがあり、そこに蓋の上の精巧なとんぼが乗ることで、自然と人工、静と動、素朴さと華やかさが一体となった複合的な美を形作っているのです。

また、三輪の車輪を模した脚部の造形は、ややユーモラスでありながらも器としての安定感を高める構造的要素となっており、見た目以上に実用性にも配慮された設計となっています。

香爐としての機能と演出

香を焚く器である香爐は、その機能ゆえに「空間を設計する器」とも呼べます。本作は、香が蓋の小孔から立ち上ることで、とんぼの羽ばたきと香煙が重なり、まるで風に舞うとんぼが実際に飛翔しているかのような演出を可能にしています。香りとともに漂うのは、夏の記憶、自然の風景、そして陶工の想いです。

和室に置けば床の間に涼風の景をもたらし、現代の空間に置いても、一種の“対話するオブジェ”として鑑賞者の視線と感情を引き寄せる存在となるでしょう。


文齋窯の歴史と、六代文齋の歩み

初代小川文齋(文助)は九州で築窯の技術を習得し、1847年に鹿背山にて一条家より「齋」の字と家紋を拝領して創業しました。1873年には京都・五条坂に窯を構え、以来六代にわたり、150年以上にわたって京の地で作陶の火を灯し続けてきました。

現当主の六代 小川文齋(興)様は、大学院で彫刻を学んだのち、京都府陶工高等技術専門校で陶芸を学び、日展などで数多くの入選を果たした実力派です。代々受け継がれる京焼の伝統に加えて、彫刻的アプローチと現代的な造形感覚を積極的に融合させることで、新たな表現領域を開拓してきました。

「平和を願いながら、美しいと思う作品を全力で作っていく」――その信念のもと、緑という色彩を通じて、争いのない世界を願う姿勢が、この「とんぼ香爐」にも力強く息づいています。


一匹のとんぼがもたらした、記憶と再生の器。
六代文齋様の精神が静かに羽ばたく、心に残る一作です。
どうぞ、香りとともにその想いをお受け取りください。

 

六代 小川 文齋(興) 文齋窯 六代目 当主
陶芸作家・日展 会友・京都工芸美術作家協会 会員

活動経験
・カルチャーセンター講師(毎日・NHK・京都)20年継続中
・野焼き (五代文齋と共に)
・有限責任事業組合工人を結成・参加

陶歴
1974 京都五条坂の陶芸家 五代 小川文齋の長男として生まれる。
1999 京都造形芸術大学大学院 芸術学部 彫刻コース 修了
2000 京都府陶工高等技術専門校 成形科 修了 / 京展 入選 / 全関西美術展 入選
2001 京都府陶工高等技術専門校 専攻科 修了 / 京展 入選 / 京都工芸美術作家協会 入会
2002 グループ展「5人展」 / 京都市工業試験場 窯業研究室 修了 / 京展 楠部賞 / 第34回日展 初入選
2003 京展 入選 / 第25回日本新工芸展 日本新工芸奨励賞 / 日本新工芸家連盟近畿会 入会 / 全関西美術展 入選 / 第35回日展 入選
2004 京展 入選 / 第26回日本新工芸展 入選 / 日本新工芸展近畿展 読売新聞大阪本社賞 / 第36回日展 入選
2005 第27回日本新工芸展 東京都知事賞 / 初個展 (京都大丸百貨店アートサロン) / 第37回日展 入選
2006 第28回日本新工芸展 入選 / 日本新工芸展近畿展 読売テレビ放送賞 / 全関西美術展 入選 / 個展(髙島屋京都店 美術工芸サロン) / 第38回日展 入選
2007 京展 入選 / 第29回日本新工芸展 入選 / 第39回日展 入選 / 京都女子大学附属小学校 創立50周年記念 陶芸展 出品
2008 京展 入選 / 第30回日本新工芸展 入選 / U.S.E Uryuyama.Sculptors.Exhibition (ギャラリーマロニエ)
2009 グループ展「真朱展 冬の集い」 / 日本新工芸家連盟 会員になる / 第31回日本新工芸展 出品 / 京都工芸美術作家協会展 協会奨励賞 / 日本新工芸展近畿展 読売新聞大阪本社賞 / 第41回日展 入選 / 個展 (京都大丸百貨店 アートサロン) / U.S.E展 2009 (ギャラリーマロニエ)
2010 第32回日本新工芸展 出品 / 第42回日展 入選
2011 京都女子学園 創立100周年記念 第8回特別展「附属小学校卒業生-陶芸作家展」出品 / 第33回日本新工芸展 出品 / 全関西美術展 読売テレビ賞 受賞 / 新天地を求めた京焼 清水焼団地五十年の歩み 出展 / U.S.E 4 (ギャラリーマロニエ) / 創立65周年記念 京都工芸美術作家協会展 出品 / 個展 (京都大丸百貨店 美術画廊)
2012 第34回日本新工芸展 審査員 / 日本新工芸展近畿展 京都市教育長賞 / U.S.E 5 (ギャラリーマロニエ)
2013 京焼 文齋窯 六代目を継承する。
第35回日本新工芸展 出品 / U.S.E 6 (ギャラリーマロニエ) / 第44回日展 入選
2014 U.S.E 7 (ギャラリーマロニエ) /日本新工芸家連盟 脱退
2015 琳派400年記念現代作家200人による日本画・工芸展(京都文化博物館)/ 平成の京町家×平成の工人 / U.S.E 8 (ギャラリーマロニエ)
2016 京都六原地区「みんなでつけよう ろじのあいしょう」プロジェクト銘板作成 / 陶芸に集う日本画・写真・截金 四人のコラボ展(ポルタギャラリー華)
2017 個展 大丸京都店 美術画廊 / U.S.E 10 (ギャラリーマロニエ)
2018 喫茶去~まずはお茶を一服~ 工人(ポルタギャラリー華)
登り窯 損壊
2019 登り窯修復 完了
京展 小さな宇宙展(ポルタギャラリー華)
六代 小川文齋襲名披露祝賀会
2020 京展 小さな宇宙展(ポルタギャラリー華)/ 京都工芸美術作家協会 選抜展
2021 創立75周年 京都工芸美術作家協会展 / 個展 大丸京都店 美術画廊
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