秋の晴れた日の午前10時

秋の晴れた日の午前10時

陶器や磁器を鑑賞する際、どのような場所で、どのくらいの明るさで味わうのが良いか。
「素晴らしい銘品の作品なら、どこでどうのように見ても感動するでのではないか」と、思われる方もおられましょう。
しかし古来より、例えば青磁は、

「秋の晴れた日の午前10時ごろ、北向きの部屋で障子一枚へだてたほどの日の光で」

といわれています。なんと細やかな場所と時間帯の指定。
この言葉を聞いた時、ふわっとその情景が浮かんできたものです。


にぎやかな都会の喧騒を離れて、古い木造の一軒家の北向きの部屋。
暑かった夏も過ぎ去り、吹く風も爽やかな天気の良い日の午前。
中国で14世紀に作られた「飛青磁 花生」などをひざ元において、ゆったりとした時間をすごせたらどれほど幸せだろうと・・・。


ところがもちろん「飛青磁 花生」は国宝ですので、夢のまた夢なのですが。

陶磁器は、微妙な釉色・釉調を味わうことによって鑑賞を深めることができます。
それが、自然光により微妙に変化して、その最も作品の本来持っている美しさを堪能できるのが上記のロケーションだという事でしょう。
しかしそうなると、午後ではどのように見えるのだろう、天候が変われば、季節が変われば、どのように見えるのだとろうと、興味は尽きません。

陶磁器を鑑賞するのは、やはりロケーション(空間と採光など)が大事でしょうし、さらには自分の心の置き所も重要でしょう。
雑念があるとそちらに気を取られて、陶磁器に素直に向き合うことが難しいと感じております。
「禅」の精神のように「無」の境地に至ることが出来たら良いのでしょうが、なかなか難しいものです。

さて先ほどの「飛青磁 花生」ですが、これは現在「大阪市立東洋陶磁美術館」に所蔵されております。(住所--大阪府大阪市北区中之島1丁目1−26)


この美術館では、「秋の晴れた日の午前10時ごろ、北向きの部屋で障子一枚へだてたほどの日の光で」を再現させるべく、
自然の光で陶磁器を鑑賞できる、自然採光システムを取り入れた「自然採光展示室」というものがあるそうです。
機会があれば拝見したいと思っております。
(スタッフ-Y)

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