懐紙の選び方

懐紙の選び方

鳩居堂・榛原・辻徳を中心に、用途で“ちょうど良い”一帖を見つける

抹茶のお菓子受けから、メモや簡易のポチ袋、コースターまで。懐紙は「書く・拭く・包む」を一枚でまかなう“和の万能紙”です。起源はその名の通り、懐(ふところ)に入れて持ち歩いた携帯紙。いまも茶席はもちろん、日常の所作を美しく整えてくれます。

今回は老舗の鳩居堂、江戸和紙の榛原(はいばら)、京都の懐紙専門店辻徳の特徴を押さえつつ、サイズ・紙質(にじみ止め)・意匠の3視点で、はじめての方にも通な方にも役立つ選び方をまとめます。


1. まずは「サイズ」— 茶席の基本と、ふだん使いの目安

懐紙はおおむね2サイズが基本です。

一般(女性)サイズ約145×175mm。市販の多くがこの寸法で、男女問わず日常携帯にも向きます。

大判(男性)サイズ約175×205mm。茶席では男性はこちらを用いるのが通例。包む・敷く用途では作業に余裕が出ます。

迷ったら「一般サイズ」を常備、茶席や包み用途が多い方は大判も併用、が便利です。辻徳は“用途を限定しない表記”を採り、茶席では男性=大/女性=普通を推奨しています。


2. 次に「紙質・にじみ止め」— 置く・拭く・書くのバランス

懐紙にはにじみ止め加工の有無原料繊維の違いがあります。

にじみ止め“あり”:水分のある菓子の敷紙や、熨斗代わりに◎。文字もくっきり。

にじみ止め“なし”:吸水性が高く、口元を拭う・テーブルをさっと拭き取る用途に最適。

和紙原料の代表は楮・三椏・雁皮。楮は強靭で温かみ、三椏は緻密で上品な艶、雁皮は平滑で“和紙の王様”と称されます(製品ごとに配合は異なります)。


3. 意匠を選ぶ— 無地/透かし・漉入れ/浮彫/色ふち

懐紙の表情は所作の印象を左右します。代表的な意匠と、今回の3ブランドの見どころを紹介します。

無地・利休懐紙

茶席の基本。まずは白無地を一帖。流通寸法は145×175mmが標準です。

 

 

透かし・漉入れ(すきいれ)

紙に柄を漉き込む上品な技法。辻徳は京都ゆかりの図柄など、漉入れシリーズが充実(例:「みやこみち」などの大判)。茶席でも浮かない“さりげない意匠”です。

 

 

浮彫(型押し)・季節柄

紙面にふっくらと柄が浮かぶ“浮彫”は、鳩居堂の定番。「さくら」など季節の意匠は、甘味の受け紙や一筆箋使いにも上品です。

色ふち・江戸趣味

縁に刷毛引きの色が差された榛原の「色ふち」懐紙は、凛とした佇まい。心付けを包む・箸包み・ポチ袋仕立てに映えます。


4. ブランド別ハイライト

【公式】鳩居堂オンラインショップ

お香と和紙文化の老舗。浮彫や季節柄の懐紙、書画用品ゆずりの上品な和紙肌が魅力。写真茶席でも日常でも取り回しやすい佇まいです。公式では和紙製品全般の品質にこだわり、商品は直営・正規取扱での購入が安心。

日本橋 榛原 -はいばら-

江戸日本橋の和紙舗。「色ふち」懐紙四方紅など、刷毛引きの色の品格が身上。女性持ちの「姫小菊」など、ふっくら張りのある和紙で菓子受けにも頼れます。

京都懐紙専門店「辻徳」 公式サイト

“懐紙のある暮らし”を提案する専門店。漉入れ・型抜き・黒懐紙・りぼん懐紙など多彩で、にじみ止め有無まで用途別に明快に整理。茶席はもちろん、日常のメモ・コースター・心付けまで発想が広がります。

 

5. 使い方の要点

向き:二つ折りの折り口を手前にして扱うのが基本。お菓子受け・吸い口拭い・器物を支えるときに所作が安定します。

しまい方:茶席では懐紙入れに収め、汚れた面を内側に折って始末。

日常:四つ折りでコースター、三つ折りでポチ袋、包んで心付けなど。辻徳の活用例が実用的で豊富です。


6. はじめての方向け「3点セット」

白無地(一般サイズ、にじみ止め“なし”)… 拭う・敷く・書くの万能ベース。

季節の意匠(一般サイズ、浮彫や透かし)… 来客時や手土産添えに。

大判(にじみ止め“あり”)… 水羊羹や生菓子の敷きに。辻徳の漉入れ大判は上品でおすすめ。


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