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練込青瓷曙茶盌 諏訪蘇山

練込青瓷曙茶盌 諏訪蘇山

Regular price $2,052.00
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幅 : 13.9cm 高さ : 6.4cm

Ⅰ.作品概要

本作「練込青瓷曙茶盌」は、『枕草子』冒頭の名句「春はあけぼの」に着想を得て、白磁・青磁・藍磁・紅磁・黄磁という五色の磁土を幾層にも重ね、轆轤で一気に挽き上げる“練込(ねりこみ)”技法によって誕生した抹茶碗です。夜の闇が薄れ、空が群青から桃色、やがて仄かな黄金色へと移ろう――その瞬時の色調変化を層状のグラデーションで器肌に映し込み、「あけぼの」の気配を茶席へ運び込みます。


Ⅱ.造形とフォルム

端反りの口縁

口縁はごく僅かに外反し、茶筅の動きを妨げず、唇当たりも滑らかです。縁を走る淡い藍磁層が、夜明け直前の深い群青を暗示します。

浅広がりの見込み

見込みは浅く開き、練込模様が底へ向けて穏やかに収束します。抹茶を注ぐと、緑の液面が夜明けの空に昇る初日を思わせ、色彩の対比が鮮やかに浮かび上がります。

軽やかな高台

高台は低めに削り出し、外側へほんのり広がる形状です。掌に収めたときの安定感が高く、見た目の軽快さと実用性を兼備しています。高台脇には黄磁層が顔を覗かせ、夜明けの金色の一条を暗示しています。


Ⅲ.練込技法と釉調――「あけぼの」の色を抱く層の深み

五色磁土の層構成
白磁・青磁・藍磁・紅磁・黄磁を順に板状へ延ばし、幾十にも重ねて円筒に巻き、芯土として轆轤成形。回転に伴って層が螺旋を描き、夜明けの空にたなびく雲の帯のようなストライプが自然発生的に現れます。同じ景色を持つ茶盌は二つと存在しません。

透明青磁釉のヴェール
成形後は透明度の高い青磁釉を全面に掛け、還元焼成。釉層がガラス質の膜となって内部の層模様を包み込み、光を受けて淡い靄のような滲みを生み出します。藍磁層は夜の残光を、紅磁層は曙の薔薇色を、黄磁層は差し始める陽光を示唆し、白磁層がすべてを柔らかく溶かし込んでいます。

釉肌の触感
釉面は微細な凹凸を残さず、指先にしっとりと吸い付くような感触。視覚のグラデーションとともに、肌理の静けさが手のひらを通じて心を落ち着かせます。


Ⅳ.茶席での取り合わせと機能美

季節 推奨主菓子 茶盌との相乗効果
早春 桜薯蕷・梅花羹 紅磁層が春霞を思わせ、薄紅の菓子を優しく映えさせる
水牡丹・若鮎 青磁・藍磁層が涼感を強調し、透明菓子の清涼を引き立てる
月見団子・菊慈童 黄磁層が名月の光を暗示し、秋の夜長の情趣を深める
柚子餅・雪平 白磁層が雪景色を連想させ、抹茶の緑が生命の兆しを際立てる

抹茶との調和
抹茶の鮮やかな緑が五色の層に浮かび上がり、茶碗内部に“春の芽吹き”が出現したかのような視覚効果をもたらします。

照明効果
行灯や蝋燭の暖色光を当てると、紅磁・黄磁層がほのかに輝き、藍磁層が夜明け前の静寂を深めます。夜席では特に幽玄な景色が際立ちます。


Ⅴ.文学的背景と意匠の意義

『枕草子』と「あけぼの」

清少納言が描いた「あけぼの」は、闇と光が交錯する一瞬の色彩の饗宴です。四代 諏訪蘇山様 はその言葉を磁土の層に置き換え、文学と陶芸を横断する新たな青磁表現を試みています。

練込青磁の発展

初代 諏訪蘇山様 が確立した「蘇山青磁」は単色の翡翠色を極めるものでしたが、四代は多層化による色彩とリズムを取り入れ、青磁の可能性を広げています。五色を用いた練込は諏訪家でも希少であり、色彩設計と焼成管理の高度なバランスが求められます。

黄磁層の挑戦

黄磁は酸化気味で発色しやすい一方、還元焼成下では失色しやすい難物です。本作ではカオリンに微量の鉄・チタンを添加し、還元でも淡いレモンイエローを保つ配合を実現。藍磁層との補色関係が「あけぼの」の光彩をより際立たせています。


Ⅵ.作家略歴と制作姿勢

四代 諏訪蘇山様(1970年京都市生まれ)は、三代 諏訪蘇山様 と塗師・十二代 中村宗哲様 の薫陶を受け、2002年に四代を襲名。青磁研究を基軸に、蛍手・飛青瓷・練込青磁など多彩な技法を駆使し、「作品には物語を宿し、使い手の心と重なって完成する」という理念を掲げておられます。本茶盌では「夜と朝の狭間に潜む無限の可能性」を掌に託し、点前のひとときに春の息吹をもたらしたいとの思いが込められています。


Ⅶ.結語

 「練込青瓷曙茶盌」は、翡翠色の静謐な青磁に藍の残夜と紅の薄明、黄の朝光を抱き込み、『枕草子』が描く春の夜明けを器上に再現した逸品です。豪華さよりも品位と優雅さが場を包み込み、抹茶を注げば緑の光が夜明けの空を染め上げます。四代 諏訪蘇山様 の研ぎ澄まされた造形感覚と練込技法が結実した本作は、茶席に季節の移ろいと文学的情緒を呼び込み、見る者の心に穏やかな希望と新生の息吹をもたらしてくれることでしょう。

 

四代諏訪蘇山 略歴

1970年 京都市に生まれる 父 三代 諏訪蘇山・母 十二代 中村宗哲 三女
1988年 京都市立銅駝美術工芸高等学校漆芸科卒業
1992年 成安女子短期大学造形芸術科グラフィックデザインコース映像専攻卒業・専攻科修了
1996年 京都府立陶工高等技術専門校成形科・研究科修了
1997年 京都市伝統産業技術者研修陶磁器コース本科修了 父と共に陶磁器の制作活動 各地にて中村宗哲展に出品、哲公房に参加
2002年 四代諏訪蘇山を襲名
現在 各地にて諏訪蘇山展を開催

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