紅斑釉花器 竹村繁男
紅斑釉花器 竹村繁男
幅 : 18.5cm 高さ :17.5cm
丸みのあるフォルムと色彩の美しさ
竹村繁男様の「紅斑釉花器」は、見る者に丸みと安心感を与える、柔らかなフォルムが特徴です。一見すると落ち着いた白色のように見えますが、実はその表面には淡いピンク色が隠されており、見る角度によって微妙に異なる表情が現れる作品です。この釉薬の色合いが、まるで秘められた美しさを内包しているかのように、さりげない華やかさを花器に与えています。
紅斑釉の魅力 - 葡萄の灰から生まれる淡いピンク色
「紅斑釉(こうはんゆう)」は、毎年剪定する葡萄の枝の灰を使って生み出される釉薬です。焼成の過程で灰に含まれる成分が反応し、淡く優雅なピンク色を帯びた仕上がりとなります。紅斑釉は自然灰釉ならではの温かみと柔らかさが特徴で、竹村様が追求する素材の個性がそのまま色彩に反映されているのがわかります。この釉薬は、同じ配合でも窯の中で変化するため、どの作品も唯一無二の色合いを持ち、竹村様の作品作りに対する深い情熱を感じさせます。
存在感と繊細さを兼ね備えた形状
紅斑釉花器の形状は、陶器の魅力を最大限に引き出すために、安定感と繊細さを兼ね備えたデザインです。安定した形状の中に柔らかさと微妙なラインが取り入れられ、全体としては調和のとれた美しさを保っています。この花器は機能性と美しさを兼ね備えており、どの角度から見ても無駄のないフォルムと、釉薬の深い色合いが調和して、圧倒的な存在感を放っています。
自然素材と竹村繁男様の情熱
竹村繁男様は、自然灰釉の第一人者として30年以上にわたり、釉薬作りに情熱を注いできました。紅斑釉は葡萄の灰を用いており、自ら剪定し、焼いて灰にした素材を使用しています。伝統的な技法でありながらも、現代においても作陶に新たな表現の可能性をもたらしています。素材や灰の個性を最大限に引き出すというアプローチが、紅斑釉花器の中で息づいており見る者の心を惹きつけてやみません。
手間を惜しまない釉薬作りの工程
紅斑釉を作る工程は、他の自然灰釉と同様に多くの時間と労力を要します。毎年の葡萄の剪定から採取される灰はわずかで、さらに水で洗浄し、何度も水を取り替えてアクや不純物を取り除きます。このように丁寧なプロセスを経て作られる釉薬だからこそ、作品には自然が持つ美しさと温かみが宿り、独自の存在感を放つのです。
竹村繁男様の略歴と受け継がれる技
昭和28年、京都府山科に生まれ、京都府指定無形文化財保持者である木村盛伸に師事しました。高校時代から陶芸の道を志し、京都市立日吉丘高校陶芸科を卒業後、8年の修行を経て昭和55年に独立し、「大日窯」を開きました。以来、自然灰釉にこだわり、独自の釉薬と作陶技術を用いて作品を生み出し続けています。
現代の名作としての紅斑釉花器
「紅斑釉花器」は、自然灰釉と独特な形状の美しさが絶妙に組み合わさり、現代陶芸における名作として高く評価されています。土の力強さと釉薬の温かみが融合したこの作品は、情熱と自然への深い理解が凝縮されています。紅斑釉の優雅なピンク色とその変化する表情が、見る者を魅了し、唯一無二の存在感を放ち続ける名品です。
竹村繁男 略歴
昭和二十八年 : 京都府山科生まれ
昭和四十七年 : 京都市立日吉丘高校陶芸科卒業-木村盛伸先生に師事
昭和五十年 : 第四回日本工芸会近畿支部展 初入選
昭和五十三年 : 京都府工芸美術展 入選
昭和五十五年 : 独立し山科に大日窯を開窯
昭和六十三年 : 第三十五回日本伝統工芸展 入選
平成元年 : 「土の子会」結成
平成二年 : 第三十七回日本伝統工芸展 入選
平成八年 : 第二十五回日本伝統工芸近畿展 奨励賞
平成十年 : 第五十三回新匠工芸会展 入選
平成十三年 : 京都工芸美術作家協会展,京都「高島屋」にて個展
平成十四年 : 第四十九回日本伝統工芸展 入選
平成十五年 : 岡山高島屋画廊にて個展
平成十七年 : 横浜高島屋美術画廊にて個展
平成十八年 : 京都高島屋美術画廊にて個展
平成十九年 : 第三十六回日本伝統工芸近畿展 京都府教育委員会教育長賞
日本工芸会正会員認定
岡山高島屋画廊にて個展
平成二十年 : 日本工芸会陶芸部会正会員による第三十六回新作陶芸展 日本工芸会賞
平成二十一年 : 第五十六回日本伝統工芸展 入選
平成二十二年 : 第三十九回日本伝統工芸近畿展にて鑑査委員に就任
平成二十六~三十年年 : 日本伝統工芸近畿展 入選
令和元年~六年 : 日本伝統工芸近畿展 入選
令和五年 : 日本伝統工芸展 入選
令和六年 : 日本伝統工芸展 入選
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